詩「円いやみ」
現代詩手帖2023年7月号選外佳作(山田亮太選)
円いやみ
栫伸太郎
水平線、 ぼ 僕は誰に も たどり着く
ことが出来ないあな たを 回り続けるこ
としか出来 ない僕 はシャツを
もらえない個だい くつもシャツを吐き
出してきた紅葉 を強要するように気
圧が侵 略し てくる 僕は絶対的に一つ
だ僕は何 よりも巨きい 何よ
りもくらい一 つの歯一 つの舌 僕は伸
びる伸び続ける僕 は乱視 だ世
界はどこまでも 続く等距離の二つの
交わらない 。 反っ た車海老の脊椎の
稜線の光る野菜の 稲妻であ る
あなたの目が見るま まに全ては僕に 取
り囲まれてい る筏全てはあなたの 目の高
さが決めているだか ら弧を描いて車海老
は紫色 の雲に顫えて飛 んでいくの だ
。 移動する窪 んだ眼球は水平線 に落
。 ちていくのだ僕は空 と海とにつぶさ
れている 僕は何もかも剥奪さ れた栄養
僕は何も かも剥奪さ れた移動巷間の波状
の胃 袋大き 。 な無だ僕は広さ
を持たない僕は色 を 持たない結ば
れない透 。 明な歯列だい や高
邁な中切歯だだか ら僕はあなた の頭 。
の中にしか存在で きない僕は上顎だ僕
は争いの口蓋だ目で 穴に色を塗れ目の
中に腕を入れ ろだ から黄色い水平線 。
は引き 抜け乾い てる濡れているあ なた
の目が僕の 長さを 決める水 平線 は
あ なたの目で作ら 。 れる水平線は
あなたの脳に食 べられることで存在
するあなたが眠る とき 僕 もまた眠
るだろうあなたの 。 夢の中で僕は暗く
焼けていく僕 は描かれる 線 いつま
でも 濡れているいつま でも 乾いて 。
いる僕はあな たの視界をあ なたの脳
の中から描いて 。 いるのですぐるぐる
じゃま だたりないもっと 濃くかご
のなかで 水平線が際限 。
なく伸びていく何か が潰された
芥子の香り 。 がして水平
線の辺りがゆれる そこ から どんど ん
赤くなっていく 羽音 がしてミツ バチが
遠くからや ってくる水色のミツ バチが赤
。 い蜜蜂が緑色の蜜 蜂 が乗
り越えていく僕を 僕の中へ
半分潰されながら 音 の 蜜
蜂存在の蜜蜂が 暴いてい く剥がす剥 。
離さ せる蜜を滴らせな がらミツ バ 。
チが 水平線を四角く 。 し
ていきます僕は可笑 しくて
たまらないだから あなたの頭 の中 か
ら 。 有名な兄弟 を全て削除
しなさいそ 存在のミツバチが潰
されたものを 僕の下で 毎日潰さ
れていく全て のも のを
解体するから代行す る接続す
る線になる僕誰泣 ける泣けるね水平線
が水平線が 伸びてい くよ僕は増えていく
よ世界 。 の周り にあなたの上顎に な
るつぶされた豆腐の ようにじりじ
りとやわ らかくや わら
かいくずになって いく崩される撃ち 抜
。 かれる貫かれる何も なかった今日が
こぼれてい く壁がおそろ しいのに壁が
崩れること で脳みそがきえる線 がない
ことは 存在がな いことだ ああ飛び交う
踏 切の 愚かな声僕の下で なにかが
つぶれていく僕 の中でなに かが産まれて
くるもし もし浮かび上がっ てく る誰で
すかあ とろけるあぶら みが僕ですよわた
しはこのいえ にずっといたあ
ああの波は昔俺の 舌だっ た
あああの雲は 昔俺の腕だ った
ああああ夢を見 る 前に 。 新
しい歌があらゆる地 。
形の比喩を越えて僕 の 手元にあ
る風をかぶ り砂埃が僕の 位置を知
らせる曙光が僕の 新しい歯だ
湖の舌を飾っ ている僕がい
ちばん大きい残念な こと に倒れ
ないと何 も始まらない 。 僕は倒
れている からこれ以上倒れ ることができ
な 。 いのです 倒れないと 何も始ま
らない いつ までも生きる 森のようにふ
らふらと ぐつぐつと雷で眠 る僕 の
背中が 雨を食 べている僕の背中で
虹が雪 崩れるこのま 。 ま消えてしまっ
てい い畦道が俺を 。 少し ずつ呑ん
でくれる消化してく れ る夏の丸 い
湿度 の中へ取り込ま れて消
えていくまで揺 れる 洗濯物に
支配された まま膨大な支配の
中でたなびいて 。 。 波の聴こえな
いところまで 。 歩いていけよ
(注)円周率(小数点以下312桁まで)に倣って文字を配置した。