健康との付き合い方#3
エビデンスという言葉の落とし穴。
エビデンスには強いエビデンスと弱いエビデンスがあります。弱いエビデンスについては考えるまでもないでしょうが、今回は強いエビデンスにも同様に問題点が潜んでいるといったお話です。
まずは、出版バイアスについてお話します。これは、ポジティブな結果の研究報告がされやすいという現象で、ひどい場合だと、商品の製造会社が販売を促進すべく、確実に自社にとって都合のいい結果が出る研究を行っている場合すらあります。
つまり、いくらエビデンスがあるといえど、どのような立場の人がどういう意図をもって示したエビデンスかまで掘り下げて考えることが重要だということ。
真の意味で穿った見方ができるようになるには、自分なりにメタ分析(複数の研究結果を統合して分析し、本質を見定めていくこと)を重ね、リテラシーを磨いていくくらいしか方法はないでしょう。
例えば、皆様の中には、睡眠時間は長くても短くても致死率が高まるという研究結果があることをご存知の方もいらっしゃることと思います。この研究は、睡眠学者の方々も引用されることがあることから、強いエビデンスを持った研究結果といえるでしょう。
ですが、短いことで致死率が上がるというのは当然の事として、長くても同じようにというのは、私達の直観にあまりにも反しているとは思いませんか?長く寝ることが病気を誘発するなどということが本当にありうるのでしょうか?
そこで、これは例えばの話なのですが「睡眠不足の人はストレスが多い」という研究結果が得られた場合。
このケースでは、睡眠不足がストレスを引き起こしている可能性とストレスが原因で睡眠不足となってしまっている可能性の両方が考えられます。(どちらもの可能性もあるにはありますが。)
本来の因果関係が前者であるにも関わらず、後者が正しいと錯覚してしまうのが因果関係の逆転という現象です。
ですから、もしかしたら、睡眠を取れば取るほど死亡率が上がるのではなく、元々、致死率の高い病気をかかえている人の脳が、それを寛解させるべく、睡眠を長く取るよう体に司令を出しているというだけかもしれないのです。
以上のことから、私はこの研究結果に疑問を呈します。
睡眠がすべての健康の土台となるとの考えを持つ私にとっては、できる限り長く眠ることこそが一日の最重要タスクです。
それと、強いエビデンスがある研究結果だからといって、それがそのまま万人に当てはまるというわけでもありません。1万人に当てはまるとしても、あなたに当てはまるかどうかは全くの別問題。
そもそも、その一万人というのが曲者なのです。なぜなら、サンプリングバイアスという問題があるから。
これは、心理学分野で浮かび上がってきた問題なのですが、Western, Educated, Industrialized, Rich, and Democratic(西洋の,教育を受けた,産業社会の,裕福で,民主主義国家)の方々に研究対象が偏ってしまうことが多いといったものです。
つまり1万人に当てはまる。の1万人の日本人の割合は限りなくゼロに近い可能性が高いということ。日本人同士ですら身体構造がまるで違うのに、西洋人(こちらも一括りにすべきではありませんが)のデータがそのままあなたに当てはまるということは、おそらくまれでしょう。
ですから結局、最適な健康法というものは、あなたが知識を手に入れ、実践していくことでしか見つけることはできません。
まずは一つの習慣を2週間ほど試して様子を見てみましょう。良さそうなればそのまま続け、駄目だと思ったら、2週間を待たずにすぐにやめて、次の新たな習慣に取り掛かるべきです。健康には地道が近道。前から何度も申し上げている通り、決して焦って成果を求めてはいけません。
とはいえ、私にできるのは皆様自身が賢明な判断をなさって下さることを祈り続けることだけ。なぜなら、皆様をコントロールしようと考えること自体がおこがましく、してはならないことだからです。そもそも、あなた自身の行動をコントロールできるのはあなたをおいてほかに誰もいません。
ですがもし、私の記事のいずれかがきっかけになったという方がいらっしゃるのであれば、それ以上の喜びはございません。
今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。