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伐られた公園の木を、市民主導で公園のベンチに再生したお話。

始まりは、みどりと公園課係長からの一言。

話の始まりは東村山市で2つの公園管理を受託していた相羽建設あてに、公園課の係長から言われた一言でした。
『公園で伐られる木がもったいないから何かに使えないでしょうか?』と。
見るとそれは樹齢、数十年はゆうに超える、目通りで80㎝はあるコナラやケヤキなど広葉樹でした。その時は何に使えるかは全くの未定でしたがとりあえず引き取らせてもらい、木材として利用できるように製材と乾燥を施し、保管することになりました。

公園で伐採された樹木を回収
新木場の製材所で6㎝の厚さで板に製材加工
乾燥庫で人口乾燥をかけて、使える状態にして、
出来上がった板材の山。果たして何に使おうか…。

市民の希望から公園のベンチに再生することが決定!

そんな折、公園管理をしている中でボランティアの方からこんな提言が。
『この公園、居心地のいいベンチがないからなんとかつくりたいんですが相羽さんでつくれますか?』と。
調べてみると最近のベンチと言えばアルミやコンクリートで、しかも座り心地をあえて悪く?しているようなものばかり…。
それならば公園の木を使って、オリジナルのベンチにしましょうか?と提案したら皆さんから快諾を頂きました。ここから市民主導の【恩多みんなのベンチプロジェクト】が動き始めます。
ベンチ製作資金はボランティアさんを中心に資金集め、いわゆるクラウドファンディングでつくりだしました。とはいってもその手法はアナログ。回覧板でチラシを配り、口コミで声を掛け合って多くの住人、法人から資金が集まり最終的には99の個人・法人から資金が提供されました。

デザイナーと市民が対話しながらベンチを設計する

ベンチのデザインは地域で一緒に活動をしているデザイナーの小泉誠氏に依頼。まずは地域の人たちと居心地のいいベンチを考えることから始めました。ゆったり本を読みたい、子ども連れでちょっと飲食が出来たらいいね、美味しいビールが飲みたい!など公園を良く知る人だからこその意見が沢山、聞かれました。
現地視察、話し合いを重ねてデザインを書き起こします。実物大の試作品を製作し、実際に市民と確かめ、そこから何度も図面を修正していよいよ、製作にうつります。

小さいテーブルがついて、ピクニックが出来るベンチ
まるでソファーのようにゆったり座れるベンチ
実物大のモックアップで本当に気持ちいい角度を決めていった

職人の手仕事+市民の作業参加

木材の塗装作業には市民の方にも参加していただきました。こうしたことでモノに愛着が湧くのと同時に、先々のメンテナンスも自分たちで関わっていくことが可能になります。
ベンチのフレームは鉄工職人の手づくりで、木材加工と現地の設置には外構会社と相羽建設の社員大工が関わりました。予定通りにすんなりいかないこともありましたがそこは職人の技でクリア、無事設置完了!

木材の塗装作業をみんなで!
鉄骨加工は地元の鉄工会社に依頼
小泉さんと職人さんと現地で設置の最終確認
木材加工と取り付けは社員大工の手で

【恩多みんなのベンチ】完成

こうして出来上がったベンチがこちら!
四季折々の自然を感じながら、老若男女、だれもが、自分の好きなように公園の時間を楽しめるベンチに仕上がりました。
ベンチの背面には出資者を銘打った、木製のネームプレートが取付られています。このことを家族や知人に語ることが、木のベンチを守り続けることになり、公園の価値や居心地の良さを高めることにつながっていくと考えます。

座面が低く、深く座れるデザイン
木材だけを取り換えることで長期の使用に耐える設計
L字型になることで会話が弾んだり、いろいろな方向を眺めたりできるデザイン
小さな丸テーブルがあることで居場所としての機能が高まっている
プロジェクトの出資者を記した木材のネームプレート

JID AWARD2022 プロダクト部門賞を受賞

このベンチは2022年のJID AWARD2022プロダクト部門賞を受賞するに至りました。講評にもありましたがベンチのデザインそのものに加え、行政・市民・デザイナー・地域事業者が連携して地域の資源を有効に、有意義に再生したプロジェクトそのものを評価いただけたと考えています。
公園の再生や活用、維持管理を通じて街の環境や人のつながりをより良くすることが出来たプロジェクトです。そしてここがゴールではなくこれからもこういった仕組みが広がっていったらとても嬉しく思います。

JID AWARD2022授賞式の様子
プロジェクトに関わった皆さんと展示パネルの前で

ベンチのある公園
○恩多野火止水車苑
○恩多稲荷児童遊園


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