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75 郷愁タビゴハン③ 麺類 中国大陸篇


【中国大陸篇】
 前回書いたように取り立てて麺が好きなわけではなく、麺大国にいてもわざわざ食べに出向くことはなかった。地方地方に独自の麺が生息している気配はあるけれど、ほかに珍しい美味しいものが沢山あるし。
 ただ、「お!」という記憶の麺は、蘭州の焼きうどん
 あるとき蘭州の町外れをぶらぶらするうちになんとなく食いっぱぐれてしまって、ようやく目についた小さな食堂に入ったら、注文してないのに作ってくれた。

小姐の手打ち麺。

 キャベツや葱やキノコやら野菜たっぷりと、コシの強いうどん(まさにうどん)を、ちゃあちゃあと炒め合わせて醤油味、ほどよい辛さは豆板醤かな。
 肉の準備もしていたが、嫌いだから入れないで、と言うと「了解、でもタンパク質をとらないと」と、目玉焼きをひとつ焼いてのせてくれた。感激と旨さで写真は撮らず。

 そんな(どんなだ)漢エリアだが、中国は断然端っこが面白い。そして美味しい。いちばんは新疆ウイグルのラグメン

カシュガルの食堂で。

 トルファンの市場で初めて食べて、ほぉと満足。基本は茹でうどんと野菜&羊肉炒めにスープが付いてくる。で、うどんに炒めものを混ぜながら食べる。
 わたしの食べ終えた皿には行儀悪く肉が残って申し訳ないのだが、野菜炒めがすごく美味しい。トマト、葱、大蒜の芽、玉ねぎ等々、野菜は店によって微妙に異なるけれど何種類も入っている。トマトは必須のよう。
 ひりひりする辛さはないけれど、スパイスが、もう、そこが東アジアではないことを知らしめる感じ。
 麺と野菜を一緒に炒めたタイプもある。
 トルファンからウルムチに向かう途中のドライブインで出てきたのはそのタイプで、羊肉ではなく鶏肉、トマト等のほかにじゃがいもが入っていた。じゃがいも入りは以降どの店でも出会っていない。
 
 ウルムチからカシュガル、それからパキスタンに入り、北西部を巡って南下しておよそ2ヶ月、首都イスラマバード近くのラワールピンディでウイグル食堂に入った。おお!ラグメン!
 2ヶ月間カレーまみれだった舌にラグメンはやさしく懐かしく、ウイグルよ、東アジアではないが南アジアでもない、そうだ中央アジアだった、としみじみ麺を噛みしめたのであった。(やっぱり肉は残します。)
 
 さて、そうしてまた別の旅。
 チベットのトゥクパは町(村、集落)ごとに麺の種類が違っていた。細うどん風、やや太め、きしめん風といろいろで、ティンリーの食堂の平麺がいちばん好みだった。スープはどこもだいたい同じで、あっさり塩味。辛味が欲しければ自分でテーブル上のチリフレークを振り入れる。具は、野菜の切れ端が入っているようないないような。
 でも、その素っ気なさが良い。チベット旅は何かとハードで、標高も高いし、カラダが常に疲れている。なので、するする胃に入る温かいものが嬉しいのである。
 インドやネパールのチベットレストランでは、トゥクパというといろいろな野菜がてんこ盛りだが、現地の実物はおしなべて質素だった。今は変わってしまってるかもしれないけど。

サキャのレストラン外観、
その店内で早朝から食欲爆発のRさん。


麺類、思いのほか長くなってしまったけど、終わりです。
次の郷愁へつづく。

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