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【ニンジャ自由研究】ドラゴンとは何か?

こないだ「ニンジャの生物多様性とバイオミメティクスの話」を発表したが、そこで「ドラゴン・ニンジャはどのへんがドラゴンなのか」という疑問が生じた。そのせいで夜しか眠れないので再び自由研究の地に戻ってきた次第である。

作中においても「ニンジャとはドラゴンや吸血鬼のような架空の存在であり、存在を主張すれば自我を心配される」とも言われている。
だが考えていただきたい。作中において、ニンジャも吸血鬼も実在する。ドラゴンだけが架空存在とは考えにくい。

しかしそうだとすると腑に落ちないことが1つある。それは「ハガネ・ニンジャの放浪の旅が世界各地に龍や破壊神の伝説が出来る元になった」という記述である。
ドラゴン・ニンジャがドラゴンを模したカラテを編み出したならば、当然「本物のドラゴン」が最初に存在するはずである。だがドラゴン/ハガネ両名は同期であり矛盾が生じてしまう。これはいかなることか?

まずドラゴンそのものについて考えてみよう。フィクションにおいて見かけるドラゴン存在はこれらが主流といえる。

①,蛇に手足と角が生えたようなやつ。いわゆる干支タイプ

②,4本の手足、長い首と尾、コウモリじみた翼を持つ爬虫類型モンスター。ゲームとかでよく見る

③,鳥のように2枚の翼と2本の足を持つタイプ。ワイバーンとも呼ばれる

④,でっかい蛇やトカゲ。ただし炎や毒などを吐き通常の爬虫類ではないもの

この4種がメジャーなところだろう。
これを見る限り、とりあえず「爬虫類的ななにか」であることは確定である。

次に、忍殺世界のドラゴンについて考えてみよう。最もよく出てくるのはもちろんドラゴン・ニンジャ…ではなく「ただのドラゴン」である。ザイバツ・シテンノをはじめ、アンダーガイオンやスガモ重犯罪刑務所はドラゴンの名のついた区画があるし、ヤクザクランの名前に使われてたりヤモトが四神獣のオリガミを折るくだりもあった。このオリガミのシーンはコミカライズにも登場し、そのドラゴン・オリガミは形的に①のドラゴンと思われる。後にノボセ老のもとに届けられたドラゴンのオリガミ・メールも同型だったので、少なくともネオサイタマにおいてドラゴンといったら①のタイプだろう。

この①のドラゴン(以下『龍』)について調べたところ、興味深い記述を見つけた。龍とはただの手足のある大蛇ではなく、ラクダの頭、鹿の角、ウサギの目、牛の耳、トラの拳、タカの爪、蛇の胴体、魚の鱗、蜃の腹を持つキメラ生物だというのだ。ちなみに「蜃」とはそれ自体が架空生物であり、ゲン・ジツを操り幻の楼閣を作り出すドラゴンあるいは二枚貝との混成生物を指す。腹側が軟体動物めいた腹足、あるいは二枚貝の殻めいた鱗を持つということだろうか。
そんなキメラ存在でありながら、雨や水源、その恵みと災いを司るもの、権力や富の象徴、として崇められるような存在である。我々の世界でも12年周期で元日のポストとかに現れる。
完全に余談だが、現実のチャイナには「大雨で増水した川に龍がいっぱいいた」だの「田んぼにいた」だのという逸話が残っており、これらのことから「現実の」龍とはヨウスコウワニのことではないかという説もある。

では②~④のドラゴンは何か?我々の世界では西洋諸国で語り継がれるこういった怪物は邪悪存在として描かれることが多々ある。よくあるのは
①邪悪なドラゴンが人々を苦しめる
②英雄がドラゴンを退治する
③英雄はその功績によって何らかの利益を得る
という話である。中には聖ゲオルギウスのような「こいつ(毒を吐くドラゴン)を何とかしてほしかったらキリスト教に改宗しなさい」と言い放ったケースもある。こいつほんとに聖人?
このように、どう見ても龍とそれ以外の邪悪ドラゴンは全く別の存在である。

ここで冒頭に触れた「世界各地に竜や破壊神の伝説ができる元になったのはハガネ・ニンジャ」という話を思い出してほしい。恐らく邪悪存在としてのドラゴンとはハガネ・ニンジャであろう。ニンジャ真実が隠されていると考えれば、聖ゲオルギウスの逸話も支配力を強めようとする邪悪なニンジャのやり口に思えてくる。
だが全ての西洋圏のドラゴン伝説が邪悪存在というわけでもないらしい。単に宝物の番人として登場する者、自然の化身などとして描写される場合もある。こうした伝説の全てがハガネ・ニンジャに由来するわけではないということか。

ドラゴン・ニンジャクランの言う「ドラゴン」が龍だとすると、次の3つの可能性につながる。
1,龍が先にいて、それを何かしら模倣したのがドラゴン・ニンジャ
2,ドラゴン・ニンジャが先にいて、彼女がやった何かしらの功績が形を変えてモータルの間で語り継がれている
3,ドラゴン・ニンジャは龍に変身する
③に関しては本編中で全く描写も示唆もないので完全に仮説。
モータルがハガネ・ニンジャが暴れ回る姿を邪悪な龍ととらえたのならば、ドラゴン・ニンジャの苛烈なカラテと本人のほとんどブッダ性などから龍の伝説ができたという②の可能性もある。
ネザーオヒガンには龍が棲んでいるし、①の可能性も十分にある。

そもそもネザーオヒガンの龍、邪龍オオカゲは何者だろう。彼(?)はネザー龍なる生物の一個体だという。その外見は四神獣のドラゴンとほぼ同じ。ではこれがドラゴン・ニンジャクランのオリジンなのか?
だが、ドラゴン・ニンジャの半身、ティアマトは邪龍オオカゲに「龍とは我だ」と言っている。これが本当だとすると「ドラゴンを模倣したのがドラゴン・ニンジャクラン」という認識がそもそも間違いな可能性がある。

そこで調べてみると、ネザーオヒガンは「コトダマ空間に堆積した、モータルの持つ『地獄』の概念に対する恐怖や想像力が実体を持ったもの」だという。とすれば「ネザー龍」も「モータルの抱く『地獄のドラゴン』みたいなイメージから生まれた存在」である可能性が高い。そんなイメージがモータルの間に広く存在するのは、そういった存在が先にあったからに他ならない。それがハガネ・ニンジャであれそれ以外であれ、ネザー龍はドラゴン・ニンジャクランのオリジンではないと言えるだろう。

ではドラゴン・ニンジャクランのオリジンはどこにあるのか。先に触れたとおり、龍とは多くの動物が合わさったキメラ存在である。ここにヒントがあるのではないか。
ドラゴン・ニンジャクランといえばやはりチャドーである。ドラゴン・ニンジャは自らの精神をオヒガンに深く投射、集合無意識領域を作り出しそこにチャドーの奥義を秘匿したという。集合無意識すなわち「大勢の意識が混ざり合った」という要素、様々な動物の混ざり合ったものとされる龍に通ずるのではないか。

「ドラゴン」という言葉そのものについても調べてみた。その語源は「ドラコ/ドラコン」、古代ギリシャ語で「大蛇」という意味だそうである。またその言葉自体、古代ギリシャ語の「はっきりと見える」という意味の言葉が語源とも言われている。
「はっきりと見える」、それが仮に「コトダマ空間が」という言葉に続く場合、上述の集合無意識空間を指していると考えられる。

ここまで書いてるともはや忍殺世界のドラゴンが生き物ではない気すらしてきたが、ドラゴン・ニンジャクランのカラテ技には爪だの顎だの髭だの息吹だのといった我々のよく知るドラゴンのイメージと実際近い要素が多く含まれている。というかそもそも何故龍が茶道をやっているのだろう…

ワカラナイ!アーッ!

いや落ち着け。あの世界は物理法則とかが根底から特殊だから難しいだけだ。変なものやトンチキな物質も多いし。なんだよカラテビーストって…
あとなんか…ナンシー=サンとかに羽が生えてるのみたような…
あれだ。コトダマ空間では羽根をイメージすれば飛べるし、ping対決で実際に卓球したりするんだもんな。

もし龍が何らかのコトダマ・イメージだとすれば?コトダマ空間を非LAN直結者が垣間見るのはたまにある現象だし、コトダマ空間の空を翔ける何かを見たモータルが「ドラゴンだ!」と思った可能性は大いにある。
特に大昔の人間は現代人より自然に近く、そういった能力が現代人より鋭敏でもおかしくない。

では何をイメージした結果の産物なのだろう。龍は様々な動物のパーツで構成された…
様々な要素が混然一体となった…この表現には聞き覚えがある。


カツ・ワンソーだ。

龍を構成する動物、特にトラ、タカ、蛇あたりはニンジャに縁深い存在で、クランも存在する。全てのニンジャの祖がカツ・ワンソーであるならば、動物系のニンジャクランが動物的になるための基礎のインストラクションを授けたのもカツ・ワンソーだろう。今思ったが、あまりこの名を連呼しない方がいいかもしれない。

ドラゴン・ニンジャがコトダマ空間やニンジャソウルに関する研究を行っていた痕跡が多数存在する。それはキンカク・テンプルの謎を解き明かすためといっていた。つまりドラゴン・ニンジャが手本としたのは天翔ける爬虫類型モンスターなどではなく、父祖だったのではないか。集合無意識によってさまざまな要素が混然一体となったものに近づこうとしたとも考えられる。

西洋の龍が邪悪存在ではなく宝物の番人として登場する伝説の話を思い出していただきたい。ここでいう「宝物」とは、金銀財宝ではなくキンカク・テンプルに至る秘密だったのではないか。キンカク・テンプルのことを最も知るのは誰か。その宝物を求める者の前に立ち塞がるのは何か。

龍とは、誰か。



さいごに
ヘッダーの赤い龍と最後の黄金立方体を描いてくれた人工頭のうのdream=サンに感謝。

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