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素敵なニュース

 お昼過ぎのテレビ番組に、地方局からのニュースの時間がある。全国放送では普段取り上げられないような、地方色豊かな情報も発信される。数日前の4月初旬のこと、その日、私の目はテレビ画面に釘付けになってしまった。

 青森局からだった。青森県鶴田市の『ツル多はげます会』のメンバーが、入学、進学のこの時期に、五年ぶりに地域の小学校に集結したのだという。この会、『ツル多』『ハゲます』という名前からお察しかもしれないが、頭にあまり毛のない方々の集まりなのだ。皆さん、そのつるっとした頭に、”交通安全”と書かれた緑色の小さなのぼり旗を吸盤でペタンと立て、同じく緑色の揃いの半被を纏って、長テーブルを前にずらりと着席されている。

 想像してみてください。かなりのインパクト。

 さて、登校してきた児童たち、さぞ驚いたことだろう。何が始まるのかと思いきや、会の皆さんがその頭をスッと前に差し出すのだ。子どもたちは戸惑いながらも、その頭をひとつ、またひとつと撫でて行く。すると、頭を撫でられながら、
「怪我なし、怪我なし。」
と呟いて、交通安全を祈願してくれるのだ。お気づきですか?
「毛が無し、毛が無し。」
大爆笑‼︎

 ちなみにこの会の創設日は2月22日。2(ツー)が並ぶ”ツルツルの日”。また、額の吸盤を引き合う、”吸盤綱引き”は名物行事で、絶妙な力加減で、競い合うそうだ。

 この地に『ツル多はげます会』ある限り、交通事故はもちろん、凶悪事件や、まして特殊詐欺など起きるはずがないと、妙な自信と勇気が湧いてきた。同時に、とてもほのぼのとした気持ちになった。このニュースを目にした多くの人が、そう感じたのではないだろうか。
 ひとたびテレビをつければ、戦争、災害、裏金問題、物価高と、眉をひそめるたくなるような話題ばかり。人々が明るくなれるニュースがあまりにも少ない昨今、ユーモア溢れるおおらかさに心和み、これは表彰状ものだ!と膝を打った。こんな素敵なニュースなら、もっともっと見聞きしたい。『はげます会』の全国展開も期待したい。

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