みみこ

ノンフィクション作家である90歳の父と、父にとっては初孫である姪、そして私の三人で、2024年4月からエッセイクラブを始めました。クラブを始めた目的は、入院中の父を元気づけること。古い思い出や日々のちょっとしたこと、自分の思いなどを書いていきます。

みみこ

ノンフィクション作家である90歳の父と、父にとっては初孫である姪、そして私の三人で、2024年4月からエッセイクラブを始めました。クラブを始めた目的は、入院中の父を元気づけること。古い思い出や日々のちょっとしたこと、自分の思いなどを書いていきます。

マガジン

  • 爺娘孫三代エッセイクラブ|北の家族の図書室

    • 74本

    祖父とその娘、孫娘の三代で作られたエッセイクラブ。主に孫娘、初孫アヤメが運営していきます。

最近の記事

私は弱い 〜あのシールと期間限定〜

 私は弱い。色々と、弱い。  先ず以て、イケメンに弱い。しかしながら、所謂万人受けする顔面偏差値の高いイケメンなら誰でも良いわけではない。ギャグセンスの高さは必須、そして、“私基準”のお顔の可愛さが必要です😊  あ、話が逸れた。今日のお題はイケメンではない。数ある私が弱いものの中でも特に弱い、かなりの頻度で買い物時、特にスーパーで夕飯の食材なんかを調達する時に出現する、その相手とは、  『半額シール』である!  今日はケーキなんか買う気はない。ないのに、ふらっと近づき

    • まさかのペアルック?

       暑い夏がやっと終わった、と思ったら、あっという間にどんと秋めいて、何を着ればいーの?という切実な朝を迎えることとなった、今日から11月。  嬉しいのは、テニスで熱中症の心配をしなくて良くなったこと。この夏は、連日熱中症警戒アラートが発令された。余りに暑くて、何度も、「今日はやめとこう」「今日もやめとこう」と、我らテニス仲間はこの夏の酷暑を恨みながら生きてきた。   しかしやっと、秋の高い空の下、ボールを追いかけても、うっすら汗ばむ程度になった。ずっと心待ちにしていただけに

      • インコの赤ちゃん、命名『ガブリエル』〈後半〉

         少しずつ成長するガブは、親(飼育人)の私が言うのもなんだが、賢い。どことなく落ち着いていて、私の言葉がわかるのかも知れない、と思わせる風情がある。そのせいか、ガブが自分で餌を食べるようになってからは、私はガブを自由にさせたくなってしまった。  そこで導入されたガブの飼育方法は、半分放し飼い。  一定のリズムでピィピィと鳴き続けるのは、外に出たいという合図。扉を開けてやると、パーっと飛び出して滑空する。正式には滑空ではない。パタパタと羽ばたいて、天井すれすれを飛ぶ。  

        • インコの赤ちゃん、命名『ガブリエル』〈前半〉

           これは、20年ほど前の出来事。  夫が次男を連れて、デパートに遊びに行った。特段の買い物もなく、ただぶらっと。  数時間後、二人は帰宅。次男は小さな紙袋を大事そうに、両手で丁寧に抱えている。やけに嬉しそうだ。私は尋ねた。 「何買ってもらったの?ケーキ?」 「セキセイインコ」  セキセイインコ!?  今日?このタイミングで?  意表を突かれた私は驚き、すぐさま袋の中を確認した。  そこにいたのは、それはそれは小さな、まだ羽も生え揃っていない、ボッサボサの赤ちゃん

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        記事

          絵画が好きなの?〜究極の自分時間を追いかけて

           絵画が好きなの? 質問者は姪のアヤメ、一緒に行った展覧会の後だった。その質問に、うん、好き、と答えたものの、何故好きなんだっけ?と自問するが、明確な答えは出てこない。  思えば、今までちゃんと考えたことなどない。良い機会を得たので、文字にしてみようと思う。  私は絵画が好きか? 好きだ。  なぜ足繁く美術館に通うのか?  格好つけて言うと、自分時間の追求だろうか。目の前の絵と対峙した時の没入するような瞬間、自分だけの時を享受する。それは隣に誰がいても変わらない。  専

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          ㊗️初・名古屋!結婚式と美術館と数寄屋造りと

           5月末、姪が結婚するという嬉しい知らせが入った。10月名古屋で挙式、我々家族も勿論参列する。「一泊する?」「いや、名古屋は近いから日帰りで十分」など、日程を考え始めた時、意外にも私にとってこれが初の名古屋だと気づいた。  そうなると、欲張りな私は何か計画を立てたい。(これは確実に父譲り)  多治見焼きの陶芸体験はどうだろう。数ヶ月前、長男がそこで作った飯碗と湯呑みがなかなか良くて、私も作ってみたいと思っていたのだ。しかし、今回はそれほどの時間的余裕はない。轆轤を回すのはま

          ㊗️初・名古屋!結婚式と美術館と数寄屋造りと

          古いノートを開いたら、1989年夏のエッセイが残っていた

           Made in Englandのオレンジ色のノート。私がイギリスにいた1989年の半年ほどの間に、様々な予定や旅の計画、日々の出納まで、雑多なことを書き込むために愛用したノートだ。  先日、片付けの最中、久しぶりに見つけて開いてみると、そこには、バックパッカーの旅を始めた日に書いた、日記ともエッセイともつかぬ文章が、とんでもなく雑な文字で記されていた。  こんな文章を残していたことなど、すっかり忘れていた。懐かしいので、そのままここに載せてみようと思う。 『8/28(

          古いノートを開いたら、1989年夏のエッセイが残っていた

          我々はそれをハンガー事件と呼ぶ

           女子大のクラスメイト8人、いつも群れて、キャピキャピして、何だかハッピーだった。  学業とバイト、音楽とテニス。海へドライブ、どうでもいい話。大人から見たら、何故そんなことを?と思うようなことに全力だったし、大切にしていた。  まだ肌寒い春先のこと。いつもより、ずっとお洒落なバーで女子会を開催した。初めてのその店はモノトーンの内装で落ち着いた雰囲気。店員さんもカッコ良い人ばかりだ。料理も特別な感じで、美味しいし、楽しいし、もうウキウキが止まるはずもない。  仲間の一人、

          我々はそれをハンガー事件と呼ぶ

          3歳児、不登園試みるも失敗するの巻

           我が家からわずかに路地を入った先に、幼稚園がある。いつもの夏はプール遊びを楽しむ声が風に乗って聞こえて来たはずだが、今夏は聞こえて来なかった。あまりの酷暑で、それすら危険だったのかもしれない。  最近、運動会の練習が始まったようだ。涼しくなって良かった。  ところで、現在の幼稚園の主流は、3年保育だろうか。25年ほど前の我が家の子どもたちはそうだった。しかし、私が園児だった57年前は、3年保育はまだまだ少数派だった。  みみこ3歳、4月からカトリック系の幼稚園に通い始め

          3歳児、不登園試みるも失敗するの巻

          イタリア物語 〜 『フランスとは、あまり相性の良くなかった私だけれど‥』続編

           フランスとイタリアの国境付近で、私はあろう事かバスを乗り違えた。それでもなんとかミラノへ辿り着き、イタリアの旅が始まった。相変わらず、行き当たりばったりの旅である。  アイテムは、トーマスクック(時刻表)、ガイドブック、列車のフリーパスの3点。加えて、怖いもの無し、根拠のない自信、意外とある体力、つまり若かった。  私の旅は、基本2、3日で次の町へ移動する。  湖の見えるこじんまりとした美しい町に行った時だ。食後にエスプレッソを頼んだら、さすがイタリア、苦味のきいた本

          イタリア物語 〜 『フランスとは、あまり相性の良くなかった私だけれど‥』続編

          東京、港区白金台、松岡美術館を訪ねて

           二週間ほど前。真夏の気配漂う午前10時、松岡美術館を訪ねた。  現在、企画展『レガシー 美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ』が開催されている。もちろん常設展も楽しみだ。  目黒駅からバスに揺られること約5分。瀟洒な建物が並ぶ静寂の中に降り立つ。高級住宅街として知られるこの街に相応しい佇まいで、美術館は在った。前庭の見事な枝ぶりの二本の木が、静かに、しかし威風堂々と我々客人を迎え入れてくれた。圧倒的な存在感に一瞬目を奪われた。  松岡美術館は、19

          東京、港区白金台、松岡美術館を訪ねて

          魅惑の赤い円筒形、『五勝手屋羊羹』

           今や全国に名を馳せた『五勝手屋羊羹』だが、ここにご紹介する。  半世紀近くも前のこと。父が新聞記者である傍ら、ノンフィクション作家としても活動を始めた頃だ。北海道内を皮切りに全国に残る伝承や祭、歴史上の事件、あるいは歴史に埋もれたままの出来事を、休日を利用し果敢に取材して回っていた。そして帰りには、何かしらお土産を買ってきてくれたものだ。  数ある土産品の中でも思い出深いのが、函館から渡島半島を横断した日本海側にある江差という町の羊羹である。  直径3センチ、長さ12

          魅惑の赤い円筒形、『五勝手屋羊羹』

          想像も度を越すと‥

           9月も3週目だというのに、まだ暑い。いい加減、涼しくなってくれないかい!?とほぼ怒りに近い感情すら湧き上がってくる今日この頃だ。熱帯地方みたいなスコールが、今にもザーッと来そうな、ポツポツ降り出した空の下、私は着たくもないポンチョに身を包み、自転車を走らせていた。仕事の帰り道。  土砂降りだけは勘弁してくださいと願いながら、しかし幸運なことに信号にも引っかからずスムーズに家まで辿り着いた。セーフ。  うん?  玄関前の駐輪スペース、自転車2台はいつも通り置かれているが、

          想像も度を越すと‥

          洗濯機が壊れちゃって、人間の退化を憂う

           「洗濯機壊れたかも」と、自宅からLINEで連絡が入った。私が実家へ帰省して3日目の日曜の朝だった。  えっ、何故? 「いったい、何をしでかしたんだい⁈」と、速攻電話をかけようとした私に、父は「怒ってはダメなんだよ」と先回りで、コツンと一本釘をさすように言った。  怒らないヨ、と言ったけど、この父、私があっという間に“瞬間湯沸かし器”状態になる事を知っている。。。  冷静に、家に、電話した。  何もしていないのに、突然、回転盤が回らなくなったらしい。まだ買って3年だ

          洗濯機が壊れちゃって、人間の退化を憂う

          飛行機に乗り込むと、私の席の隣には若いママと幼い姉弟が座っていた

           通路側の自分の席を見つけたら、お隣はキャッキャとテンション高めで絶好調の幼子2人と若いママだった。一瞬で息子2人を連れて帰省していた頃の自分と重なった。  これ、結構大変なのよね、という気持ちが溢れ出て「ママさん、私、大丈夫ですからね。むか〜し、男の子2人連れてたので」と思わずニコニコ発言していた。若いママは有難うございますと丁寧に頭を下げた。  そしてママがその子たちを、  なっちゃん、しゅんちゃん と呼ぶのを耳にして、私の記憶旅行が始まった。30年前にタイムスリップ

          飛行機に乗り込むと、私の席の隣には若いママと幼い姉弟が座っていた

          「なんだか、マグロみたい」

           父の入院をきっかけに、母、姪、私の三人で、実家で過ごした今年3月のこと。姪が言ったのか、私自身の口から出たのか、とにかく、その時私が感じていた思いを見事に言語化したのが、この“マグロ”発言だった。  マグロみたいと形容されたのは、母である。  いったいどこからその気力は湧いてくるのかと不思議に思うほど、超パワフルなのだが。  特徴その一、思い込むと真っ直ぐ。真に受けやすいと言うか、信用しやすいと言うか。特殊詐欺に引っかかってしまうのではないかと心配になる。未だその手の

          「なんだか、マグロみたい」