絵画が好きなの?〜究極の自分時間を追いかけて
絵画が好きなの? 質問者は姪のアヤメ、一緒に行った展覧会の後だった。その質問に、うん、好き、と答えたものの、何故好きなんだっけ?と自問するが、明確な答えは出てこない。
思えば、今までちゃんと考えたことなどない。良い機会を得たので、文字にしてみようと思う。
私は絵画が好きか? 好きだ。
なぜ足繁く美術館に通うのか?
格好つけて言うと、自分時間の追求だろうか。目の前の絵と対峙した時の没入するような瞬間、自分だけの時を享受する。それは隣に誰がいても変わらない。
専門家の審美眼などは持ち合わせていないのだから、自身のフィルターを通して、驚き、この絵が好きだと心底思える一枚に出会いたい。
そして、美術館を後にする時、「今日の良かったね〜」と、誰かと分かち合うのも楽しい。
実際、美術館に行けば、大抵の場合好ましい絵に出会える。帰りがけ、私は必ずポストカードを買う。沢山は買わない。気に入った数枚だけ。
20代で展覧会や旅先の美術館で絵画を楽しむようになったが、子育て中は、ほとんど足が向かなかった。アンテナが全く違う方を向いていたのだろう。絵本の原画展に行ったくらいだ。
美術館巡りを再開したのは10年前。オルセー美術館展を皮切りに、情報をチェックし、足を運んだ。東京は私の興味を満たしてくれる展覧会に事欠かない。
コロナ禍で中止や延期になったのは記憶に新しいところだ。その後、日時指定が導入されたが、久しぶりの美術館はなんとも言えぬ緊張感があった。それでも好きな絵の前に立った時、この日が戻って来てくれて本当に良かったと感慨深かったのを覚えている。
“幸せ”のあり方は人それぞれ違うわけで、私にとって絵画鑑賞は一番のご褒美のようだ。
さて、これまでに買い込んだポストカードは画家ごとに、出会った順にファイルに収めてある。
一番古いものは、ミレー展の5枚。40年前の1984年、20歳の時に母と行った北海道立近代美術館。教科書や画集ではなく、本物の西洋絵画を目にしたのはこの時が初めてだったのではないだろうか。
そういえば、全く同じポストカードが2枚ある。何年も前に買っていたものを、去年また買って帰った。ゴッホの『玉ねぎの皿のある静物』、どうやら何年経っても好みは変わらないようだ。以前の私も、最近の私もこの絵が好きらしい。真剣に吟味して、この一枚を選んだのだから。
ところで、私は絵に対する好き嫌いは、その絵を観た瞬間に決まると感じている。けれど、好き嫌いを超えて心に残る(刺さる)絵というのが時にあって、それは、その時の心の状態に左右されているように思う。
私は程なく新しい絵に会いに行く。自分時間を追いかけ、好きな一枚に出会うために。そして今のところそれは辞められそうにない。それはきっと現在の私の、言わばルーティン、あるいは中毒の一種?まぁ、そんな類いだろう。
さて、究極の自分時間の完成形はいったいどんな形だろう。私の場合、一日の終わりに好きな絵を眺め、ふと眠りに落ちる、これが最高かな。その眺めている絵がたとえ小さなポストカードであっても、お気に入りならそれで良い。