突然、癖っ毛出現
直毛が自慢の私だった、35歳頃までは。真っ直ぐで、ツヤツヤで、母に三つ編みしてもらおうにも、弾力が強くて纏まらないほど、ビシッとしていた。
しかし、いつしか私の髪は癖っ毛に変わった。うねりはなかなか厄介で、殊に梅雨時の湿気の多い日などは、どんなにしっかり整えても、無駄。ショーウィンドウに映る人の姿を見て、
“あらあら、あの人、髪の毛爆発してるわ。”‥‥
でも、よーく見たら、私!なんてことも。
学生時代の親友は、癖毛にとても悩んでいた。あのシャンプーが良いと聞けば直ぐに試し、真っ直ぐに伸ばすための小さなコテを日々持ち歩き、ストレートパーマが世に出た時には、もちろん真っ先に飛びついた。しかし、生まれ持った癖は頑強で、苦労していたことを思い出す。
あの頃の私は、のちに自分の身に降りかかることなど知る由もなく、どこか他人事だった。今となっては、彼女の苦労が身に沁みる。
癖っ毛1年目。癖っ毛界では新人の私には、その親友のように長年闘ってきた実績がない。季節や湿度によってこんなに違うという事を、梅雨入りで初めて知る。しかし、そんな経験不足の私に、梅雨時の癖っ毛たちが待った無しで襲いかかる。取扱説明書の無い新商品に苦戦するが如し。
収拾のつかない、虚しい日々を送り、湿度が下がる“乾期”に入ってようやく騒ぎは収まった。
さてさて、どうしたものかと情報収拾する中、“縮毛矯正”という、いかにも揺るぎない力でねじ伏せそうな名前の技術を知った。半信半疑でやってみたら、やはり強かった。驚くほど真っ直ぐになった。しかし、私の場合、あまりに真っ直ぐ過ぎて、それはそれで、どうなの?と悩むほど、ズドン!と針金みたいになってしまい、泣く泣く断念。
あれからもう20年。今ではずっと高度な技術で、針金にはならないと思う、念のため。
梅雨入り間近、最も悩める時が到来する。もしかしたら今年はうねうねは現れないかもと、何故かこの時期毎年淡い期待を込めて、一日一日様子を見ている。しかし突然、あーもうダメだという日が必ずやって来て、結局美容室へ駆け込み、泣きつく始末。学習しない自らを嘆く。
髪の悩みは人それぞれ、年齢によっても全く異なる。髪の毛が一本跳ねただけで学校休みたい、そんな年頃もあった。産後脱毛は、ドキッとするほど抜けて、怖かった。そして、そろそろ白いものがチラホラ、いや、どしどしと存在感を増しアピールし続けている。黒との主権争いも近い。
しかし、何故だ。何故この癖っ毛は現れたのだ?
「どうしてなんだ〜!!」
なんて叫ぶまでもなく、答えは父、父からの遺伝なのだ。
父は、オバQに出てくる小池さんみたいな、くるくる天然パーマ。(小池さんほどではないかも?)
小池さんをご存知ない方は是非『おばけのQ太郎』(藤子不二雄先生作)でお調べください。ラーメンを食べています。
ちなみに、現在、東京都豊島区立トキワ荘マンガミュージアムでは、特別企画展「鈴木伸一のアニメーションづくりは楽しい!!~トキワ荘からアニメの世界~」を開催中。この鈴木伸一氏こそ、小池さんのモデルになった人物である。
ずっと直毛だった私、これからもずっと直毛で生きていくんだと思っていた。父のくるくるパーマは遺伝しなかったと安心しきっていたら、ある年突然出現した。
皆さまも、どうかくれぐれもお気をつけくださいませ。
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