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㊗️初・名古屋!結婚式と美術館と数寄屋造りと

 5月末、姪が結婚するという嬉しい知らせが入った。10月名古屋で挙式、我々家族も勿論参列する。「一泊する?」「いや、名古屋は近いから日帰りで十分」など、日程を考え始めた時、意外にも私にとってこれが初の名古屋だと気づいた。

 そうなると、欲張りな私は何か計画を立てたい。(これは確実に父譲り)
 多治見焼きの陶芸体験はどうだろう。数ヶ月前、長男がそこで作った飯碗と湯呑みがなかなか良くて、私も作ってみたいと思っていたのだ。しかし、今回はそれほどの時間的余裕はない。轆轤を回すのはまたの機会の楽しみにしよう。


 結婚式当日。一点の曇りもない快晴だ。早朝、東京から新幹線で駆けつける。

 歴史ある由緒正しき神社での、古式の結婚式。花嫁行列から始まり、雅楽が演奏される中、粛々と執り行われた。巫女さんの神楽の舞も披露され、親族固めの盃で乾杯。

 圧巻は“菓子撒き”。これはこの地方の古い慣わしで、嫁入りの際に近隣の人へ菓子が配られていたものが、菓子撒きという形で残ったそうだ。集まった人達へ沢山のお菓子が新郎新婦とその家族から、幸せのお裾分けのようにばら撒かれた。それはお裾分けなどというサイズ感ではなく、驚くほどの量だった。

 さて、宴も滞りなく終わり、三々五々帰宅の途へ。もう一人、東京から参加の姪と我々家族は、帰りの新幹線まで2時間半の猶予を得た。
 姪が「どうする?新幹線遅くしてどこか行く?晩御飯食べて帰る?」と、私に、この私に問うたのだ。

 そんなこともあろうかと、事前調査は抜かりない。訪問希望の美術館を伝えると「それ、行こう!」と即決、我々は古川美術館へ向かった。

 名古屋駅周辺は、その都会っぷりに驚愕するほど大変な混雑だ。地下鉄に乗り10分少々、池下駅で下車、そこから歩いて3分。

 ここでは現在『パリの100年〜バルビゾンから印象派、エコールド・ド・パリまで』が開催されている。総点数は決して多くないが、私は全ての絵に魅了された。それほどのコレクションだ。
 『霧の中の太陽』は正にモネという作品だった。近づいて観て、離れて観て、何度も振り返り目に焼き付けた。同じような作品を今まで何度か目にしたと思うが、それでもやはり、これぞモネと言える圧倒的一枚だ。

 『ブルーベリーを摘む子供達』という絵は、タイトル通りの可愛らしい絵。その作者は『叫び』でお馴染みのムンク。同じ人の絵とは思えない。これには正直、驚いた。
 他にもシスレー、ピサロ、シャガールと、私好みの絵が展示されていた。これらの作品は、全て個人蔵であることを書き加えておく。

 閉館間際だったが、すぐそばの爲三郎記念館も見学することができた。手入れの行き届いた庭園と日本家屋。数寄屋造りのこの屋敷は、初代館長古川爲三郎氏の私邸で、昭和9年に棟上げされたそうだ。
 中はまるで迷路のよう。奥はカフェになっており、大勢が利用していた。しかし喧騒はほとんど感じられない。窓から庭を眺めながら、細い廊下をひと足ひと足踏み締めていると、ほんの一時、無の感覚を覚えたのは私だけだろうか。

 思いがけず良質なものにまみえ、幸福が倍増した秋の好日。

 姪の結婚式という特別な日は、副産物と共に忘れられない一日となった。

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