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インコの赤ちゃん、命名『ガブリエル』〈前半〉
これは、20年ほど前の出来事。
夫が次男を連れて、デパートに遊びに行った。特段の買い物もなく、ただぶらっと。
数時間後、二人は帰宅。次男は小さな紙袋を大事そうに、両手で丁寧に抱えている。やけに嬉しそうだ。私は尋ねた。
「何買ってもらったの?ケーキ?」
「セキセイインコ」
セキセイインコ!?
今日?このタイミングで?
意表を突かれた私は驚き、すぐさま袋の中を確認した。
そこにいたのは、それはそれは小さな、まだ羽も生え揃っていない、ボッサボサの赤ちゃんインコ。お世辞にも" まぁーかわいい ” 、という感じではない。
聞けば、この子は他と比べても殊の外しょんぼりしていて、何とも弱々しい感じなのに、次男はこの子を選んだというのだ。
一応申し上げておきますが、この二人、本日インコを買いに出かけたわけではありません。
突然わが家に小さな家族が舞い降りた瞬間だ。
私は小学生の頃、インコの飼育経験がある。こんなに小さな子には、アワ玉という黄色い極小粒の餌を、お湯でふにゃふにゃにふやかして、小さな小さなスプーンで食べさせてやらなければならないのだ。それも、一度に沢山は食べられないので、日に何度も。
ここで前述の、
“今日?このタイミングで?“
の真意について書かせていただくが‥。
明日は、小学校の運動会。朝から家族全員のお弁当を持って、夕方までの長丁場。それなのに、赤ちゃんインコが、たった今家族になり、私は明日から赤ちゃんを抱えて、どうして運動会を観覧出来ようか、と夫に訴えたところで、既に遅し。
結局、プログラムと睨めっこして、うちの子の出番じゃない時を見計らい、走って家に戻り、餌を食べさせ、また運動会へ戻る、を繰り返した。
誰の運動会だ??
私が一番走ってるではないか!!
その間も赤ちゃんは、ピィピィと泣いて(鳴いて)おりました。
さて、この子は、まだ雄雌の区別はつかない。成長して、鼻が青色に変わったら男の子だ。しかし、名前がないままでは困るので、次男にどうする?と聞くと
「ガブリエル」
と即答。直ぐに命名された。
自ずと通称、"ガブ"。
その頃専業主婦だった私は、家族の誰よりも多くの時間をガブと過ごした。当然、ガブは私を母と認めた。
最初に見た動くものを親と見なすという、あの『刷り込み』の習性は、この場合、近くにいて餌をくれる存在である私に対して働き、私=母と決定されたのだろう。
私に懐いたガブは可愛くて可愛くて、私の外出機会を減らすほどの威力だった。
ご多分に漏れず、飼う!と言い出した張本人である次男は、ほどなく飼育に関与しなくなり、結局は母親の私が大方を担うという状況に早々に落ち着いた。しかし、毎日散歩に連れて行かなければならないわけでもない。大変さはほぼ皆無、楽しい楽しい飼育生活だ。
さて、ガブはどんな成長を見せるのか?(後半へ続く)