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ひとり旅の練習

ひとり旅がしたい。したいなと思っている。

 今回、父が白内障の手術を受けるというので、そのための主治医の話を聞きに帰省することになった。普段は我が家の豆柴と一緒に行くところだけれど、今回はそういう感じではなかったので、ひとりだ。そうだ、途中下車してプレひとり旅してみようか。始発で行けば少しだけ時間が取れるのではないか。

 前夜は、イベントがあって、いい疲労感で帰宅し、翌日は東京発6:15の新幹線。4時起きは確定。しかもこれから留守の間の家族の作り置きを用意しなければ。ちょっとめげる。でももうやるしかない。なんとか終えて0時前に就寝。


 起きたら案の定リビングはまだ夜の気配ムンムン。準備をしてそぉっと家を出たら、やっぱり外も夜だよ。少し心細くなる。ひとつ乗り換えて東京駅へ。少しずつ人が増えてくる。良かった、世界はちゃんと朝だ、とホッとする。朝食どうしようかな。前日が忙しかったから、そこまで頭が回らず。でもまあどこかで買おうと思っていたら、どこのお店もまだ開店前。こんな時間に出歩かないから、この辺のコンビニもキヨスクも閉まっていること知らなかった。想定外。お腹空いてきたー。

 新幹線へ無事乗り込む。車窓の景色が開けてきた。朝日が差し込む。それだけでうれしい。人間はやっぱり陽の光が必要だってこと、心と身体で感じる。ここ最近駆け抜けた数日。ようやくひと息つけた気がする。

朝陽がこんなにうれしい。

 車内販売がきた。水しか飲んでいないので、助かったー。こんなに朝早くから働いてくれてありがとう。あれ?お菓子やおつまみが中心。朝だから品数ないのかな?迷った挙句ワッフルをひとつだけ買う。

 さてこの日の新幹線のために読まずに取っておいた本がある。バイト先の本屋さん、生活綴方の店長鈴木さんが選んでくれた小津夜景の「いつかたこぶねになる日」。

 漢詩にまつわるエッセイだ。読み進めていくと、鈴木さんの言ってた通り、とっつきにくい漢詩に少しずつ親しみが湧く。ところが、せっかく漢詩と仲良くなり始めていたところに、すごい睡魔がやってきた。眠い!でもこの本を読む時間がブロックできる新幹線の時間が惜しくて、しばし瞼と奮闘する。奮闘虚しく、少しだけ夢の中へ。

 そうこうしているうちに途中下車する予定の駅に到着!降り立った瞬間、ヒンヤリ東北の空気の冷たさを感じた。到着してもまだ朝だった。

寒くてすぐストールと手袋装着!

 お腹ぺこぺこだったので、おにぎりとお味噌汁のお店「田んぼ」というお店に歩いて向かってみることに。でもこのまま散歩するのもいいかもなーと思っていたら「霞城公園」の看板を先に見つけてしまい、そのまま朝の散歩へ変更。この選択は成功でした。だって見て、この景色たち!

お堀を囲む紅葉
朝の散歩の人がちらほら

ずんずん進む。

城跡が不思議と牧歌的に見える
銀杏のカーペット(ベタな表現で失礼)
上を向けばこんな感じ

目からたっぷり美しいものを浴びて思うのは、朝って、素晴らしい!ってことだ。景色が生まれたばかりに感じるからだろうか。今日はまだこれからだと感じるからだろうか。

森の中にある、昔の病院。物語が頭に浮かぶよう。さて、そろそろ移動。地元なのに今まで1回も行ったことのなかった場所へ。

 山形美術館へ。それにしてもこんな風に地方美術館を目的地として改めて行くのは、初めてだ。一般800円。今は大学生なのでさらにお安く400円で入館。学生証ありがたや。中に入ると常設展の部屋へ真っ直ぐ進む。オープン直後なのもあり、数人しかいない展示室。地方美術館のいいところは、モネ・ゴッホ・ユトリロ・ルソーとか東京だったら人をたくさん集める画家たちの作品なのに、間近でゆったりゆっくり見られることだ。素晴らしかった。

館内の喫茶室「ブーローニュ」

喫茶室で公園を眺めながらあったかい紅茶をいただき、余韻に浸りつつまた外へ。

ほんとうに、来てよかった。

よくここまで我慢した!ようやくランチだ。
「食堂あを」も気になりつつ、オープン時間がタイミング合わず、今日はこちら。アルケッチャーノで地元のものをふんだんに使ったランチをすることに。

グラスが美しく並ぶ。見惚れる。

 ここはカウンターもありおひとりさまも入りやすい。そして、オイル寿司なるものを初めて食す。色々な国の塩と色々な風味のオイル。ノンアルコールの白ワイン。くぅ〜って噛み締めました。

 ふと、ひとり旅ですか?とか
カウンターでお店の人に話しかけられる。
ハイと答える。しまった。地元のことを色々教えてもらう流れになる。今更もう言えない。元地元人ですと。

 プチひとり旅を無事終えて、在来線で実家の最寄駅へ。そのまま父と家の近くの産直に寄ったり
隣のカフェでコーヒーを飲んで話す。

そんな締めくくりでした。

それにしても、ひとりで歩くことのメリットは、「今ここにあるもの」を味わい尽くせることだ。
そして、迷いつつも自分の感覚やアンテナを研ぎ澄ましたら満ち足りた旅が出来ることを知った。
少し自信が持てた。いいひとり旅の練習になりました
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