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【歌詞語り】斉藤由貴「卒業」

斉藤由貴「卒業」
発売年:1985年
作詞:松本隆
作曲:筒美京平

【結ぶ】
1 ひもなど、細長いものを組んでつなぐ。また、結び目をつくる。
(中略)
4 互いに関係をつくる。
㋐交わりを緊密にする。㋒互いに約束する。
【縛る】
1 縄やひもなどを巻きつけ、一つにまとめて結ぶ。また、動きが取れないようにひもや縄などで巻きつける。結わえる。くくる。
2 自由にできないように制限する。束縛する。

デジタル大辞泉

「結ぶ」「縛る」では、物理的な意味は似ておりますが、抽象的な意味においては、度合いがかなり異なります。

セーラーの薄いスカーフで
止まった時間を結びたい
だけど東京で変わってく
あなたの未来は縛れない

「卒業」作詞:松本隆

の小節での対比は、切なくも美しい女性の心情を、無駄なく十二分に描いております。難解なことばでもなく、多くの言葉を重ねるのでもなく。

そして

ああ 卒業しても友だちね
それは嘘では無いけれど
でも 過ぎる季節に流されて
逢えないことも知っている

同上

「分かってる」のではないのです。「知っている」のです。
女性もこの男性に対する想いは強いのですが、一方で自身の関係を「俯瞰」で見ています。いや「人生2周目感」すら溢れています。そして、この別離は悲しいけれども、この先まだ悲しいことが起きることも恐らく「知っている」ので、「涙はとっておきたい」と言います。

先の松田聖子「制服」の女性も、上京する男性の住所を手にしながらも、そこまで深追いしないのは、同じような心情があるからなのかもしれません。

松田聖子「制服」の歌詞は「卒業…」で始まり、斉藤由貴「卒業」の歌詞は「制服…」で始まります。このリンクの仕掛け、粋にもほどがあります。

あと「卒業」の

駅までの遠い道のりを
はじめて黙って歩いたね
反対のホームに 立つ二人
時の電車がいま引き裂いた

同上

のシーンも象徴的です。ホームに電車が入る様を、二人の別れになぞらえるとは。。悲しいものにも惹かれるのです。

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