臨床問題③ 人気YouTuber編
精神科医として、7年、色々な患者様を診てきました。
今回は、私ならこうする、という問題を作成しました。先生によって答えは分かれると思います。
一緒に考えてみましょう。
※解説はガチになってます。
26歳 男性 YouTuber
主訴:ADHDかもしれないので、診てほしい
現病歴:
清潔感のある青年、何故かいつも、ポケモンのTシャツを着ている。
高専を中退し、ポケモンのゲーム実況者として活動を開始。登録者は、みるみる増え、
現在は、登録者100万人、サブチャンネル30万人の人気YouTuberとなった。
最近は、高学歴YouTuberやゲーム実況者とのコラボで大忙しである。
しかし、
活動していくうちに、生活リズムはどんどん崩れ、
時間を守れない、予定を忘れてしまう、などの症状が目立つようになった。
周囲からもADHDを疑われ、ネットで検索し、当てはまったため、不安になり当院を受診することになる。
設問1
精神科医として、適切な対応はどれか一つ選べ。
1.「コンサータ登録を進めましょう、良く効くと思いますよ。」
2.「確かに、ADHDの可能性がありますね。簡易テストやIQドックを行いましょう。」
3.「すごいですね!ちなみに、チャンネル名は何でしょうか?」
4.「いや、検査してもいいですけど、その可能性は低いと思いますよ。お金もかかるので、やらない方がいいです。」
5.「ADHDに対しては、依存性のないストラテラが推奨されています。初期量の40mgより開始してみましょう。」
回答4
注意欠陥多動性障害は、就学以前の7歳未満より、症状を認めている必要がる。
また、一つもしくは、それ以上の状況で、注意の障害と多動を認める必要がある。
他の障害が混合していることが普通であり、そして、広汎性発達障害がある場合は、それが優先される。
診断で、主に問題となるのは、行為障害との鑑別である。
注意欠陥多動性障害の診断基準を満たさなかった場合、行為障害が優先される。
そして、家族歴や周産期における本人の状況も、極めて重要である。
それは、遺伝的背景や、生まれる時のストレスが関連しているからだ。
仮説段階ではあるが、大脳生理学的には、前頭眼窩野の微細な神経障害が原因とされている。
その根拠として、頭部外傷後遺症の児童と症状が酷似しているからだ。
一次スクリーニングとしては、
ASRS -v1.1 Screenerが推奨され、また、
小児期の記録(学校の成績や母子手帳など)も必要である。
知能検査(ウェスクラー式成人知能検査)や各種、臨床検査は、診断への一助となる。
治療は通常、心理社会的治療が、優先される。
それでも、日常生活及び社会生活に支障を来した場合にのみ、薬物治療を開始する。
日本ADHD学会が推奨する治療プロトコルに従うと、ストラテラ(アトモキセチン)を第一選択とするべきであり、
決して”コンサータ”から処方してはならない。
今回の症例の場合、症状が連続しておらず、社会適応もできている。
また、注意の障害は認めているが、多動は認められていない。
そして、ネットや友人からの情報でバイアスがかかっており、
この場面で、注意欠陥多動性障害の診断をしてしまうと、
医療従事者側も、当該患者に対して先入観を持ってしまう。
よって、一度否定するべきである。
設問2
考えられる疾患はどれか一つ選べ。
1.うつ病
2.双極性感情障害
3.注意欠陥多動性障害
4.不安障害
5.どれも該当しない
回答5
何でもかんでも、病気にすればいいという訳ではない。いきなり診断に至り、多剤併用となった場合は、注意が必要である。
設問3
この者に、最後にかける言葉として適切なのはどれか一つ選べ。
1.「まだ、可能性はあるので今後も通院しましょう。」
2.「あなたの生き方を貫いて下さい。」
3.「YouTuberって稼げるの?」
4.「もう少し、規則正しい生活をした方がいいのでは?」
5.「ところでなんでポケモンのTシャツ着てるの?」
回答2
まだ、若い、本人が自分で気づき、反省し、経験し、人として成長していく、それが最も正しい選択である。
以上となります。相当、主観が混ざった問題です。
※これはフィクションです