雑記85〜パーソナリティ障害の本質〜









 今回は、

 パーソナリティ障害の『本質』について、出来るだけ噛み砕いて、説明したいと思います、





 以前、自己愛性パーソナリティ障害と、


 境界性パーソナリティ障害については、軽く触れておりますので、


 先に、他にも、この様なものがありますよと、


 簡単に記しておきます、





 妄想性パーソナリティ障害
 反社会性パーソナリティ障害
 演技性パーソナリティ障害
 回避性パーソナリティ障害




 勿論、

 これ以外にもありますが、枚挙にいとまがないのでやめます、


 では、『本質』について深掘りしてみましょう、












 (本編開始)




 パーソナリティ障害を一言で言うと、


 『偏った考え方や行動』により、『家庭生活や社会生活に支障』をきたした状態
ですが、




 色々なパターンがあります(図1)、



カーンバーグのパーソナリティ障害概念




 そう、行き過ぎた考えや、行動の偏りがあるのです、






 例えば、


 世の中には、自信が無く、自分は能力がないと思い込んでいる人は少なくないです、そう、



 本当は、沢山、長所があるのに、人より劣っていると思い込んでいる、


 しかも、自信がある人を見るだけで圧倒されてしまい、



 時に、崇拝さえします、








 また、


 自分に自信がないのを補おうとして、人に救いを求め


 その結果、過度に依存したり、従属したりします、




 ※『依存の是非』に関しては過去に記事を出しているので割愛します、







 此処で、皆様に押さえて頂きたいのは、




 パーソナリティ障害は、


 上述の通り、『バランスの問題であり、とある傾向が極端になることに問題がある』と言うこと、







 つまり、


 パーソナリティ障害がどうとかの焦点は、

 本人、或いは、周囲がその『傾向』で『困っているかどうか』です、





 ※但し、本人は困っていないことも多々、あります、






 パーソナリティ障害には、

 『共通する根本的な特徴』が存在します、そして、この特徴を理解することは、


 健全なパーソナリティと、不健全なパーソナリティを見分ける上でも重要です、







 では、


 どの様な特徴が存在するのか、それは、




 ❶強い拘りを持っている

 →自分という強迫観念から逃れられない




 ❷とても傷つきやすい

 →些細な素振りさえ屈辱と受け取ってしまう




 です、






 また、

 この二つの特徴は、対人関係の中でとある問題を引き起こします、


 それが、『対等で信頼し合った人間関係を構築出来ない』と言うことです、






 そして、


 これは、愛すること、信じることへの障害にも繋がります、そう、



 どの様なパーソナリティ障害も、


 『愛し下手という問題が生じる』のです、この愛の歪みは、


 当人、パートナー、家族を安定した幸せから遠ざけてしまいます、









 閑話休題






 先ほど述べた、


 二つの特徴と、愛の障害は、

 パーソナリティ障害が『自己愛の障害』であることに由来しております、







 どう言うことか、

 それは、この自己愛が適切に育っていないと、『自分を大切にすることが出来ない』為、


 生き辛さを抱えるのです、





 ※『自己愛の重要性』については、以前、別の記事で触れているので割愛します、






 酷い場合には、些細なことで、自分を傷つけ、時には命を断ちます、また、厄介なのは、



 健全な自己愛を得られた者からは、この様な行動が全く理解出来ないことです、


 そう、『わざとらしく』見えてしまうのです、




 だが、

 重い自己愛の障害を抱えている人、言うなれば、パーソナリティ障害の人にとっては、


 『生き続けること自体が試練』となります、





 こうした強い自己愛の歪み、自己否定感は境界性パーソナリティ障害で、良く認められます、そう、



 まさに、

 自己愛という根底が崩壊しているのです、また、逆に弱さや傷付き易さを補おうと、



 自己愛が過剰に肥大している場合もあります、此れが、以前、


 お話した自己愛性パーソナリティ障害です、








 閑話休題





 そして、

 境界性パーソナリティ障害が、『自己愛の病理』を抱えていると最初に提唱したのは、



 ジェームス・F・マスターソンです、




 マスターソンは、

 境界性パーソナリティ障害と、自己愛性パーソナリティ障害が、

 『自己愛の障害の表裏両面』であり、




 競争に勝ち抜き、自信満々に振る舞う『自己愛防衛型』の『成功と破綻』により、



 自己愛性と境界性は

 何の側にも移行し得るとしました(図2)、




 また、

 『凡ゆるパーソナリティの根底にも、自己愛の病理がある』とし、



 そして、その防衛が崩れた時、


 どのタイプのパーソナリティ障害も、

 境界性パーソナリティ障害へと移行し得るとしました(図2)、




 (図2)


  境界性    (壁)  その他のパーソナリティ障害

          ←防衛が崩れた時、(左)へ移行し得る









 閑話休題





 パーソナリティ障害の人は、


 前述の通り、傷付きやすく、自己愛に由来する生き辛さを抱えております、




 だが、

 人は生きなければならないです、そして、パーソナリティ障害の方は、


 生きようとする生命力と、抱えている生き辛さに、鬩ぎ合いさをせながら、




 特有の適応パターンを編み出していきます、





 つまり、

 『パーソナリティ障害とは、生き辛さを補うための適応戦略』なのです、






 従って、その方の、

 少々変わった、振る舞いは、その人の生き辛さを反映しており、


 必死に生き続けている証でもあります、




 この考え方は、アーロン・ベックに由来しています、






 閑話休題





 パーソナリティ障害の人の適応戦略は、独特の認識や生活様式を織りなす、そして、




 彼ら彼女らは、

 生き辛さを補おうと、時に特別な能力を身につけ、磨いていく、


 そう、『代償性過剰発達』が起こり得るのです、



 そして、

 それは、時に人の心を動かす不思議な能力にもなります、




 だが、

 人の心を動かす、傑出した能力を持つものは、往々にして、


 恵まれない幼少期
を過ごしています、




 でも、


 私は悲観することなく、前を向いて欲しい、そう健全な自立でなくとも、


 得られる幸せはあるでしょうし、




 貴方の個性を活かして欲しいなと私は思います、以上です。






 精神科医ましろ





 後書き:


 パーソナリティ障害の方は、私の外来経験でみると、30歳を超えると少しずつ落ち着いていきます、


 「時間が解決すると言うことか、無責任な」、



 確かに、そうなのですか、


 30歳は『而立」と表記するように、人間は時の流れの中で、


 他人を知り人として成長して
行きます、



 今、生き辛さを抱えている人も、必ず、光は待っていると私は思いますね、



 希望を持とう。



 参考書:   「パーソナリティ障害」 岡田尊司
     「現代臨床精神医学」    大熊輝雄



 おまけ



 パイセンw




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