臨床問題①
24歳 女性
主訴:生き辛さ、人間関係
現病歴:
彼女は、容姿端麗で、推薦で有名大学に進学。その後、大手企業へ就職。
しかし、上司とのトラブルがあり、現在は休職中。
どうやら、10代の頃より、人間関係は不安定で、彼氏ができては、相手を困らせていたようだ。
一人でいるのが、非常に不安で誰かと一緒にいたいと訴える。
診察時:
矢継ぎ早に、自分を語っていった。どうやら、話を聞いて欲しいようであった。
そして、過去に、性被害にあったことがあると、話し、面接は15分を超えた。
何度か、面接をしているうちに、
「私の気持ちを理解してくれるのは先生だけです。」と急に距離を縮めてこようとしてきた。
設問1
この場面で、精神科医として、正しい対応はどれか。
①距離を縮め仲良くする
②過去のエピソードをもっと詳しく聞く
③話を切り替え、復職に向けたアクションプランを示す
④枠組みを設定し、関係が落ち着くのをただ待つ
⑤自傷行為をしたことがあるか聴取する
解答④
精神科医療で、枠組み設定は、とても大切です。それなくしては、成り立たない。
待っていると、段々、関係は落ち着いていきます。ここで、距離を縮めると収拾がつかなくなります。
そう、依存を助長させてしまうのです。
なので、
初診の時点で、その患者との、関係の”限界点”を明らかにし、相手が良い意味で安心できる場所を提供することが肝心です。
設問2
この症例で、鑑別疾患から除外されるものはどれか。
①心的外傷後ストレス障害
②依存性人格障害
③うつ病
④境界性人格障害
⑤パニック障害
解答②
今回の症例はおそらく、境界性人格障害です。
依存性人格障害との違いは、相手に対して、好き、嫌いの両価性(アンビバレンス)が存在することです。
なので、パートナーは、好きと言われたり、大っ嫌いと言われたり、どう対応していいかわかりません。
したがって、安定した人間関係は築けなくなります。
依存性人格障害の場合、相手に服従するため、そこまで大きなトラブルに発展しません。
設問3
この、患者への初回治療として、誤っているのはどれか2つ選べ
①パキシル
②デパス
③ラモトリギン
④第二世代抗精神病薬
⑤支持的精神療法
解答①、②
SSRIはかえって攻撃性や衝動性が高まる場合もあるため、初回治療では慎重に検討するべきです。また、ベンゾジアぜピン系も依存耐性リスクがあるため、推奨されません。
補足:実際の、臨床の場では、気分安定薬及び抗精神病薬は奇形児や錐体外路症状など、リスクを伴うため、認容性があるSSRIやベンゾジアゼピン系を選択することが多いです。
これは、相当難しい問題です。
以上となります。
※これは、全てフィクションです。