7 Days to End with Youに脳を焼かれた話
先日、表題にある通り7 Days to End with Youというゲームをプレイしました。言語の分からない世界で記憶を失った主人公として目覚めたプレイヤーが、なにかと世話を焼いてくれる女性の元で七日間をすごす…というゲームです。一時期いろんな配信者が話題にしていたので一度プレイしてみたいと思っていたゲームでした。
事前情報として「自分のことを看病してくれるけど言語がわからない女性と7日間で何とか意思疎通するゲーム」だということを聞いていました。ここからなんとなくこれはもどかしい言語の壁を楽しむ恋愛ADVのようなものだ…と高をくくって遊び始めましたが、認識が甘かったようです。ガバガバな認識のままラブコメ感を勝手に楽しむアホのプレイ記録だと思ってご覧ください。ネタバレ注意です。
一週目
この周回ではほとんどできたことはなく、カレンダーらしき壁掛けの紙から数字を推測したり家庭菜園らしき場所で指示通りに水をやって褒められたりしていました。楽しいね。
部屋の中にはなにやら実験室のような場所もあり、彼女、理系の研究者的な人なんだな…俺の彼女すげぇ…と悦に入っていました。記憶喪失のくせに…
結局、この周回では特にできることもなく7日間家の中のものを物色して歩き、7日目になって体調不良で死期を悟って満足な言葉も残せずに看取られました。ここで彼女に泣かれてしまい、「そうだよなぁ愛する人と言葉が通じないまま別れを迎えるなんて辛すぎるよな、とりあえず当面の目標を彼女に愛してるとかありがとうとか伝えて死ぬことにしよう」と決めました。
二週目~
しばらくこれといった進捗もなく七日間を繰り返しました。その間やったことといえば手探りで料理をしたり、窓の外を眺めて会話(成立しない)をしたりです。なにやら不穏な夢の中で「戦争」「裏切り」といった単語を習得したり、新聞を断片的に読んで「俺戦争帰りなのかな…」とおもったりもしました。
そして何週目かで彼女を台所の椅子に座らせることに成功しました。彼女と一緒に家を歩き回って言葉を教えてもらうというのが基本でしたが、これで一人で見て回れるようになります。普段は出ようとすると制止されてしまう外に行ったり、危険だと言われていた毒を飲めたり新展開があるかもしれない…と思い、この状態で探索しました。
すると、二階の本棚になにやら金庫のような、文字を5つ入力できるパネルがあるのを発見しました。ここで私、「こういうのは大概恋人の名前にするもんだよな~照、どれ入れてみよう…お!通った!も~(笑)」くらいのノリで脳死で自分の名前を入れてしまい、大切な手掛かりを逃してしまいました。本来ならここで何か重要な事実に気が付くのかもしれませんね…
本棚裏の部屋は、わかりやすく牢獄でした。明らかに人間を拘束していた痕跡もあります。ですがラブコメ展開から離れたくなかった私はこれを「不穏だ~キャッキャッ 戦争のトラウマで暴れる自分を一時的に拘束してたんだな」と解釈し、彼女に部屋を見つけたことすら知らせませんでした。
n周目
引き出しの中にあったタロットカードから「死」「恋人」「審判」を特定し、どこかこの単語が使われている場所はないかと探したところ…
私がメタ読みで突破してしまった5桁のパスワードのヒントに使われてました。「死」と「恋人」はタロットカードからの特定なので間違えようがありません。「人」も多少意味のズレはあれど、基本的には人物を指すときに使われていた単語なので大体意味は通っているはずです。つまりヒントは「死んだ恋人の名前」で、それが私なわけです。はい…?
一度疑いだすと全部怪しく思えてきます。実験室の様子は床に骨があったり、遺跡の写真があったり、本にはセフィロトの樹らしきものが描かれていたり、フラスコや試験官があったりと学問の種類が多様で、それらの説明も理解できなかったのですが…
人体錬成してんじゃん。このセリフ、最初は「作る」の意味を正しく取れてないんだろうなとスルーしたんですが、今見るとがっつり話してくれてますね。ちなみにこれはまだ恋愛ADVからの落差がデカすぎて情報を受け止め切れていない段階のスクショです。
人体錬成を視野に入れて会話を振り返ると怪しい点がボロボロ出てきます。机の上の赤いナニカを指さすと「失敗 研究」と話すし、隠し部屋の痕跡は明らかに人間一人(しかも生きてる)から流れ出た血の量ではありません。
セフィロトの樹はド直球「永遠の命」「人間誕生」的なモチーフですし、なんなら1日目に目を開けた私を見た時の第一声が「成功!」です。
ここから推測するに、彼女は複数の人間を材料に一度死んだ私を何らかの技術と宗教的な要素を組み合わせて復活させ、何食わぬ顔で過ごしているということになります。おもしれー女ってレベルじゃないぞ…
そして個人的に一番ヤバいと感じたのが次の画像です。実験室の壁に貼ってあるメモなのですが…
こちらのメモの黒四角、なんと周回を重ねるごとに増えていきます。最初に気づいた時はだからどうしたくらいの認識でしたが、これが意味するのはつまりこのゲームの周回は「時間を巻き戻してもう1プレイ」ではなくて「復活させたのちに死んだからさらに再蘇生」だということにそこでようやく気付きました。ゲームのシステム部分にまで意表を突かれ、私が認識していたゲームの枠組みは完全に崩れ去りました。点と点が繋がり始めたプレイヤーを戦慄させる、最高のメタ要素だと思います。
ちなみにもう一つ周回を重ねても残る要素として、寝室のノートがあります。ここに書いた内容は周が変わっても消えないので攻略用のメモとして使えるのですが、この内容が消えないのも別に攻略用の特例措置とかではなくて時間を巻き戻していないからだったんですね。
真エンディング
私の当初の目標は彼女に「ありがとう」あたりの言葉を伝えて死ぬことでしたが、こうなってはもうそんな色ボケしたこと言ってられません。伝えるべきは「愛してる」より「悔い改めて」です。そしてさらに何週かして、最後に残す言葉をいろいろ変えながら死に続け、やっと迎えた別エンドがこちらです。
どうしてこうなった。違うんだ、僕は決して責任取って死ねとかそういうことを言いたいんではなくて、僕が死んだ後もどうにか前を向いて幸せに生きてほしいだけなんだ────といっても彼女には伝わりません。なんせ「睡眠 ともに 求める」なんですから。何を言ってるのかはさすがにわかります。
…最期の瞬間、彼女が何か一言話してほしい様子を見せたので「おやすみ」を伝えました。少なくとも、満足している様子でした。救いがないからとかやってることがヤバいからとかそういうのではなくて、ただ純粋に主人公と一緒に居たいがためにすべてをやってのけた執念と、その裏で罪の意識を感じ続けてボロボロになっていたであろうことを考えるとちょっと本気で涙腺に来るようなストーリーでした。
別エンドとギャラリーとタイトル
最期の瞬間、「おやすみ」のかわりに彼女の名前を伝えると、新たなムービーが流れました。内容としては、誰かが英語で錬金術?の勉強をしているところに横からこのゲーム特有の言語で『(彼女の名前)?』というメモ書きが差し出されるというものです。順当に考えれば、彼女たちは記憶の一部を保ったまま現実世界に転生(生まれ変わり?)して、何かのきっかけで主人公が彼女に気づいて話しかけたというシーンだと思われます。というかそうであってほしい。
ギャラリーにはエンディングを見るごとにドット絵のイラストが追加されます。そのうち一枚は寝ている彼女のイラストなのですが…
こちらのイラスト、毛布を動かしてかけてあげることができます。
7日間、常に献身的な彼女に、もらったやさしさの少しだけでも返してあげるのが当初の目標かつ一番やりたいことだったので、「毛布を掛け直してあげる」というそのものズバリな演出が用意されていたのは、大げさに言えば救いでした。エンド後でもう涙腺ガバガバだったのでここでもちょっと涙が出ました。
このゲームのタイトルは「7 Days to End with You」です。この文は7 Days to Endとwith Youで区切って「君と過ごした、終わりまでの7日間」と訳すのが普通だと思います。しかし、ゲームのストーリーを知ったうえでタイトルを見直してみると、with YouをEndに掛けることでもう一つの意味を読み取ることができそうです。すなわち「君と終わりを迎えるための7日間」です。これは彼女と主人公どっち視点でのタイトルなんでしょうかね…
これらすべての衝撃的で、人間的で、言葉で言い表せないほど切ない物語を、ゲームという形態で、しかも自分で物語を構成する言葉を手探りで見つけられたことを心から幸運に思います。自分の手でこの物語を把握し、その真相に呆然とすることができて本当に幸運でした。