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壺おじを50回クリアしたので勝利宣言する

タイトル通りです。俺はやったぞ!!!

Getting Over It With Bennet Foddy (作者の名前)をクリアしました

本当は一回か二回上って終わりにするはずだったんですけど、作者の話が思っていたよりも面白かったのと実績名がこちらを試すようなものになっていて挑発されたような気がしたので、一年と少しかけて50回登頂しました。

登頂一回目

初めて登頂したのはスクリーンショットの日付によると2023年の6月のようです。初回の登頂には3時間かかっていました。「苦行ゲー」の代名詞的な存在として、以前から興味のあるゲームの一つだったんですよね。

登山に挑まんとする壺おじ 真っ黒な壺が初々しいですね

壺おじの難しさについてですが、そのほとんどは癖(と少々の悪意)のある操作感と落ちたらそこからやり直しの設計からきているものです。つまり実は、理不尽要素はほとんどないということです。最初の登頂は辛く、同じところで何度も落下しそのたびに深呼吸をし、丁寧に上り直し……これが全部自分のミスからきているのです。まさに自分と向き合って乗り越える経験そのもので、変な笑いが出てきます。最近時々ある、脈絡なく突然ストーリーの展開をプレイヤーのせいにしてくるゲームよりもよっぽど自分の責を感じさせられます。

初登頂

そして登頂しました。上る途中で作者がいろいろ哲学的な名言やゲーム制作に対する姿勢、このゲームに込めた意図などを長々と(そして少々嫌味っぽく)話してくれるのですが、この時はそんなの聴く余裕なかったです。ミカンの崖が一番つらかったです。

実績も取りました。「Got over it. (乗り越えた。)」というやつです。
んで、この実績の取得率は9%なんですが、二回登頂した実績の取得率は6%なんですよね。つまり購入した人の9%しかクリアできないが、一度上った人のうち2/3は再度登っているということになります。リピーター率が高いんですね。せっかく実績もあるしということで今度は作者の話をゆっくりと聞きつつ、もう一度上ることにしました。

登頂二回目

画像が残ってないんですが結局二時間はかかったような気がします。一回登ったからって以降が簡単になるというわけではないんですよね。でもまあこれで登頂、「Got over it, For real this time(今度こそ本当に、乗り越えた)」という名前の実績も獲得しました。本当はここでやめるつもりでした。

作者の話も面白かったです。序盤はなぜこのゲームを製作したのかについて話し、中盤はインターネットの普及に伴うゲームの在り方について、後半は…淡々とした口調で登り続けたプレイヤーへの感謝を述べてくれます。決して煽り散らかしてくるようなことはないです。

作者はこのゲームは、2002年に製作された「Sexy Hiking」というゲームに敬意を表して作られたと語ります。話を聞く限り、「Sexy Hiking」はいわゆる「B級ゲーム」というものに当たり、決して質のいいものではなかったようです。むしろ拾い物の素材を継ぎ合わせて雑に作られていて、遊びにくく、不親切なものだったそうです。
「Sexy Hiking」も壺おじと同じく、ハンマーを回して障害物を乗り越えるゲームです。違いは壺おじの難しさとフラストレーションがきちんとデザインされたものなのに対し、Sexy Hikingの難しさはただただ作りが適当な部分に起因するということです。そして、作者はそのクリアできるかすらわからない、テストプレイすらしてなさそうなSexy Hikingの理不尽極まりないスタイルに、「本物の価値」を見出してしまったのだそうです。

山登りという行為にとってイライラや葛藤は欠かすことのできない要素であり、これは、登る系ゲームを作る上での美しき価値だと考えています。

-作者

作者は山登りを、本質的にイライラするものでありどこまで進めるか全く確証がないものとしてとらえています。これは実際真実で、一度進めた場所であっても次は一時間苦戦することもままあります。一回クリアしたからって次も行けるとは限らない……ともいえるかと思います。

閑話休題 -Sexy Hiking遊んでみた

ポリゴンとピクセルの混ざり具合が嫌な予感しかしねぇ
タイトルも文字打ち込みじゃなくペイントツールにマウスで手書きだった

登頂回数が30回を超えたあたりで、少し気分転換に作者が話していたSexy Hikingでも遊んでみるかと思い、ダウンロードして起動してみました。想像の何倍もひどかったです。なんなんですかねこの…靴と手袋だけ妙に立体感のある主人公は……

基本的なゲームシステムは壺おじと一緒です。最初に木が出てきてそれを超えるのに苦労するのも同じです。違いは……まずハンマーの判定が見た目通りではありません。次に反発係数ってもんがまともに機能しておらず、ハンマーを視点に体を持ち上げるとガクガク震えます。これだけでももう十分ですが、一回ゴール直前で床が貫通して奈落に落下し、それまでの進度のすべてが無に帰しました。

ここで諦めた 苦痛すぎる これが本物の障害物か……

つまり作者はこんなものに「本物の価値」を見出して壺おじを製作し、そしてどうやら満足していないようなんです。なにがいいのかはさっぱりわかりませんでしたが……Sexy Hikingの難しさと壺おじの難しさは別物であり、壺おじは作者が見た「本物の価値」の再現を目論みつつ我々のような一般の感性をもったプレイヤーでも楽しめるよう調整したものだとはわかりました。

なんか……Sexy Hikingの「本物の価値」がB級ゲームの無邪気な悪意から生まれていることを考えると、魅せられた作者がどれだけオマージュを作ったところでそれの再現はできないんですよね。ちょっとかわいそうかもしれない。

50回上ることを決める

作者は登山中盤にて、インターネットの普及に伴うゲームの在り方について話し始めました。大まかにまとめると、ネットの登場によってコンテンツが消費されるまでの時間が短くなり、すぐに忘れられ、インターネットのゴミの山に加えられるようになった。さらには動画や配信が登場したことで、人々の関心をゲームに引き付けておくにはより難しいものとなった……といった内容です。所々嫌味っぽく、それでいて不快ではない作者の説教のサビ部分です。

みかんは、甘くてジュージーな果物。 それを覆うのは苦い皮。 私が望むチャレンジはこんな見た目ではありません。 私は、ただ苦味が欲しい。

-作者

↑中盤のすきなセリフです クリアの達成感のために高難易度ゲームをプレイするゲーマーとは明らかに異質な苦痛への欲求です。怖い!

終盤では一転して、特定の地点に到達したあたりから声色をトーンダウンさせ、「私たちは同じ趣向を共有していますね」「あなたもとにかく、辛酸を舐めたいと思っているクチなんでしょう」とこちらを認めた敵キャラのようなことを言ってきます。いや別にそんなマゾヒストではないんだけど……
んでクリアすると、「Got over it, For reeal this time」という実績をもらえます。これは「乗り越えた。今度こそ本当に。」くらいの意味合いです。
今度こそ本当に…?一回目も別にきちんとクリアしたが……?

なんかおかしいんですよ。乗り越えたんなら二回目の実績に思わせぶりに「今度こそ」なんてついてるはずがないんです。多分何かしら意味があります。
かなり嫌味っぽい作者が「山を一度上ったからと言って二回目も登れるとは限らない」と考えていること、「山は何度も登頂を試みることによって本物となる」としていること、このゲームのタイトルが「Getting Over It(現在進行形で乗り越えている)」であることを踏まえて考えて、私は一つの結論にたどり着きました。それは「作者は一回登ったくらいじゃ『乗り越えた』とは認めず、だからわざわざ二回上った人にだけ見える形で『今度こそ』と書いた。」というものです。
たぶん作者は「山を二度上ったからと言って三回目も登れるとは限らない」というと思います。つまり理論上永遠に山を「乗り越えた」といえる日は来ないわけですが、一つの目安として50回登頂した実績を設け、「さすがにこれだけ登ったら乗り越えたってことでいいよ」と言っているのではないでしょうか。それなら50回というバカみたいな回数にも納得がいきます。作者は我々を「永遠に乗り越えられないのはかわいそうだから……50回ドーンwやれるもんならやってみなよw」と挑発しているのです。やってやろうじゃん。

実績名「So Over It(もうたくさんだ。)」
Soを強調ととらえて「まさに乗り越えた。」と訳せる気もします いややっぱこじつけかも

やってやりました。今度こそケチをつけられない形で乗り越えました。

オラッッッ まだ文句あるか

ついでに10分切りもしました。なにが本物の障害物だ、正しい方法論を発掘したし短時間で登ってやったぞ ザマミロ
俺の勝ち これは完全に乗り越えた、Getting Over ItじゃないGot over itだ

壺はだんだん金色に変わっていった

50回上ったので壺も内なる登山パワーに感化されて金ぴかです。これは私からこんなゲームを作って私を狂わせた作者への敬意と感謝と、更に大いなる自己満足の色です。

どうせ埋立地に放り込まれて、 当たり障りのないものに混ぜ込まれるなら、 破壊的な何かを作ってもいいのではないか。

-作者

インターネットが発達してコンテンツが使い捨てられる時代を憂いてこんな破壊的なゲームを作るような作者に敬意と感謝を示すには、そのゲームを擦り切れるまで遊びたおしてやることが一番、ストレートで強力なやり方だと思います。開発者とユーザーなんですから、これ以上に純粋なやり方もないでしょう。

そしてアンインストール 最高に気持ちいい

一年とちょっとの間待ち望んだ勝利のアンインストールです。じゃあな!!!辛かったよ!!!ありがとう!!!!!


壺おじは、ゲームに純粋に向き合うということを教えてくれました。私のゲームへの姿勢を考えさせてくれるいいゲームでしたし、内容としてもきちんと難易度は調整されていて楽しかったです。皆さんも、これを読んでくれたら一度は山を登ってみることをお勧めします。こんなブログや配信でゲームを消費するより、それが最も真摯な向き合い方だからです。でないと作者に嫌味言われますよ

まあ、このビデオはYouTubeかTwitchで再生されていることでしょう。 1000万回再生レベルの人気チャンネルによるビデオがありますからね。 まさに、柔らかく反芻した後の食べ物を与えられる、小鳥のよう。 

-作者

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