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『私は勇敢な1人バスツアー客だ~はじめてのおつかい編~』(2/4)

幼少期から、なかなかの箱入りっぷりで育てられた私は、1人で気ままに出掛けることに憧れていた。

父はドライブが好きで、幼少期からよく家族では出掛けていたが、一人で旅することなど許されなかった。いや、きっと許されたとて、行けなかったに違いない。私はとんだチキン野郎だ(そしてミスクヨクヨだ)

そんな私は、県外の大学に進学した。
バイトで自分の稼いだお金で色んなところに行ってみたい。できれば1人で。いや、一緒に行こうと誘える友人も少ない。

…と、ここで、普通の人間なら、電車とかバスとかで出かけるのだと思う。
しかし、私はヤバい方法を選んでしまう。バスツアーだ。

バスツアーは、バスで色んなところに運んでくれて、セッティングまでしてくれる。
旅行初心者としては、知らない場所まではとりあえず運んでもらおう、という、安直な考えの元、伊勢旅行バスツアーをポチッていた。

でもね。当然。
想像してみてくださいよ。

女子大生が、伊勢神宮のバスツアーに1人で参加よ。

伊勢神宮よ。
どんな客層か想像つくよね。平日に伊勢神宮へ行くツアー客。

もうだいぶ昔の話で、うろ覚えだけど、まぁ聞いてってくださいよ。

***

なんとかバスを見つけて受付を済ませる。
オドオドとバスに乗り込む。
ちゃんと、隣は空席だった。さすがにそれは気を利かせてくれて助かったわい。

キョロキョロと見回すと、ご高齢の方が多い。
これは想定済み。
あとは若いカップル。
それと、女子会かな。数人の女性のグループ。これが比較的若い。

これで隣に知らない人なんて座られたら、溜まったもんじゃない。

…いや、本当か?本当は寂しいような気もしてるんじゃないの?
旅は道連れとか言うしね。隣に知らん人が座ってたら、こう自然と会話が進んだりなんかして、楽しかったりしてさ。

…いやいや、別に、これは出会いを求める旅じゃないのさ。とにかく伊勢神宮に行きたいの。

『はじめてのおつかい』とほぼ同じよ。
顔もさ。大学入学するときに、おとんに「中学生でも通じる」とか言われたぜ。
そんな奴が、キョロキョロオドオドしながら、伊勢神宮のバスツアーに1人で参加してたら、それはもう、はじめてのおつかいの絵面だよ。

てなわけでまぁ、バスはズンズン動き出す。
アテンドの方が軽く説明をするけど、とりあえず、皆ガヤガヤと楽しくお喋りしている。
そりゃそうだ。バスツアーはそうでなければならない。

私も、もちろん、楽しまなければならない。
ソワソワキョロキョロオドオドばかりしてもいられない。
だんだん、慣れてきた。

サービスエリアに到着。
バスツアーなので、そこそこ、途中で止まる。
最初のサービスエリアは、降りない。
だって。降りて、置いて行かれでもしたらどうする!

次のサービスエリア。
多くの人がおりた、まあまあ大きめのサービスエリアで、トイレだけ済ませてすぐ戻ろうと思っていたら、同じバスに乗っていた女子会グループを見つけた。あ、もう少し年配のお姉様方もいらっしゃる。その人達を見失わないように、少しだけ売店を見てから、早めにバスに戻る。全く、何のために旅行に来てるんだか。トイレにきたのか。

戻ってきた女子会軍団は、ソフトクリームを手にバスに帰ってきた。
いいなぁ。私が1人でソフトクリームを持って帰ってきたら、どんな風に見られたんだろう。
いや、そんなことを気にするやつは1人でバスツアーに来るな。

伊勢神宮に着く前に、夫婦岩に寄る。
よくわからんけど、海と岩はなんかそそる(どんな感想)
キョロキョロしながら漫然と、バスツアー御一行様の一員として歩く。話す人もいないけど、シンプルに海がいい。お天気もよく、神の使いの蛙みたいなのが出迎えてくれる。

おお、これがパワーが漲るというやつか!

岩をロープが繋いでいる。岩垣みたいなところでほげーっとしていると、ご婦人集団に声を掛けられる。

「すみません、写真撮ってもらえませんか?」

感動をしている勇者。
本日初めての人との交流。
パシャリ。

「ありがとうございます😊」

デジカメを返却して、また歩き出すと、集団のうちのお一人が、鞄をゴソゴソ。

「飴ちゃんあげるわ」
「あ、ああ、あああ、ありがとうございます😭」

勇者ヘラジカ、大阪のおばちゃん(多分)から、飴ちゃんをゲットした!!!

つづく

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