山賊と渋谷系
その夜、レンタルショップにCDを返しに、いつもの田んぼに挟まれたあぜ道を自転車で漕いでいたら、とつぜん、両脇の田んぼから、ガサガサという音がして、気づいたら、目の前にいかにも悪そうな(いろんな意味で)チーマー風のお兄さんふたりが仁王立ちしていた。
そして、その2人は言った。
「金を出せ!」と。
うわ〜これっていわゆるカツアゲやん
ととっさに気づいたけど、不思議とあまり怖くなかったのは、街灯もない夜道で2人の顔がよく分からなかったおかげかもしれない。
というか、正直に言うと、ちょっと吹き出しそうになっていた自分もいた。
だって暗がりの田んぼの中から、ガサガサ音を立てて現れて、金出せっ!
とか、それってほとんどチーマーというより、
山賊やん(笑)
そして、そのときは実際に返す予定のCDしか持ってなかった僕は、無事に無罪放免されたのだった。
時は1990年代中頃。
東京では渋谷系という名の都会的でオシャレな音楽やクラブカルチャーが流行していて、僕はそれに憧れる広島の超ど田舎にある大学のイモ系男子学生だった。
たまに山賊に襲われるような、ね(笑)
ちなみに、そのとき僕が持っていたCDは
渋谷系のバイブル
ピチカートファイブの「overdose」
だったのは言うまでもない。
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