お父さんは、大人気ない
2時間ほどふて寝して今、目が覚めた。
なんて、いきなり言われてもみなさん困惑するだろうから、今から僕がふて寝に至った経緯を説明しよう。
今日は、息子がずっと楽しみにしていた大学の学祭でチョコバナナ作りを子供たちがお手伝いするイベントの日で、僕らは約束の時間の少し前に現地に到着し、近くの神社にお参りをした後、学生さんに彼だけを預けて、妻と二人近くの喫茶店で待機することにした。
そして、その店名物のスリランカカレーに舌鼓を打とうとした瞬間、学生さんからLINEが届いた。
「息子さんが吐き気を催して、あと疲れもあるみたいなので今、涼しいところで休ませてます。迎えに来てもらえませんか?」
別れてから、10分足らずの連絡だったので、おそらく彼はチョコバナナを一つも作れていないだろう。
「すぐにご飯を食べ終えて、おそらく20分後には迎えに行きます」
と回答しつつも、その間に、何とか彼の体調が回復して、チョコバナナ作りに復帰できることを祈っていた。
すると、その数分後に、
「少し落ち着いてきたので、こちらはひとまず大丈夫です」
という連絡がきたから、息子もガッツで乗り切ってくれたのだ、と嬉しくなった。
でも、それは僕の勝手な思い過ごしで、結局、彼は気持ち悪さを克服できずに、すぐに迎えに行く結果となった。
ここですでに自分の機嫌が悪くなっていることに僕自身、気づいていた。
迎えに行くと、そこまで辛そうではないけれど、覇気がなくて、どこか自嘲気味に振る舞う彼がいた。
ずっと彼に付き添ってくれた学生さんが
「大きな音が鳴るイベント会場の近くだったから、どうやらその音に疲れたみたいです。来年は、場所も配慮したいと思います」
と申し訳なさそうに説明してくれた。
確かに現地に着いた時にそれは真っ先に気になっていたし、そもそも激しい雨の中、たくさんの人で溢れかえるこの環境は、家でずっと引き篭もっている彼にとっては、あまりにもストレスフルな環境なのも重々、理解していた。
だから、こういう結末になることも十分、想定の範囲内のはずだった。
にも関わらず、僕は悔しい気持ちでいっぱいだった。
正直、テントの中で、鼻の頭にチョコつけながら、一所懸命、チョコバナナを作る息子の姿をこの目に焼き付けたかった。
でも、それ以上に悔しかったのは、息子が、あまり悔しそうな様子を見せなかった事だ。
「自分の大好きなチョコバナナを作って人に食べてもらえるなんて最高だよね」
って
あれだけ嬉しそうに話していたのに、一つも作れずに君は悔しくないのだろうか?
君のあの想いは、その程度のものだったのか?
帰路、「早く家に帰ってゲームしたい」と彼が言い始めてから、僕はむっつりと黙りこくり、家の近所のスーパーで、彼と一緒に妻への花束を買った後(本当は明日の母の日に一緒にプレゼントを買いに行くつもりだったけど、急遽、仕事が入ったため、前倒しにしたのだった)、そのまま一人で布団を敷いて、ずっとふて寝していた。
そして、目が覚めた今はひとまず
「息子と妻に僕の不機嫌の理由をきちんと説明しないとな」
と思い直しながら、この記事を書いているところである。
ああ、我ながらまったく大人気ないし、スマートじゃない。
ああ、本当にこんな自分がイヤになる。そして、さっきからずっとこの曲が頭の中をループしている(苦笑)