参ったなあ…親父に似てきたゾ!
子供の頃、父親が苦手だった。
正直、こんなイヤなヤツにだけは絶対なりたくない、と思っていたくらいに。
でも、最近、自分がまさにその嫌いだった父親に似てきていることに気づいて、愕然としているところである。
でも、一方で、この不都合な気付きはきっと、これからの自分のそれこそウェルビーイングに役立つという予感もしている。
うん、自分がちゃんとそれを認めて、しっかりその理由を考察して次のアクションに活かせればの話ではあるけれど。
というわけで、この記事では、まずは父親がどんなふうにイヤなヤツだったかを振り返りたい。
僕が子供の頃、父は、とにかくことあるごとに他人を、特に母や僕や弟を馬鹿にする人だった。本当に普段は無口な彼の口からたまについて出る言葉と言えば、決まって
「こんなことも分からんのか」
「どんくさいやっちゃなあ」
「ほんま、しょーもないやつや」
ばかりというくらいに。
確かに、父に比べたら、僕らは間違いなく頭が良くなかったのは事実ではあったけれど。
父は祖父と同じ船乗りになるために高専に進学したけれど、中学の成績は学年一番だった、とたまに自慢していたし、確かに本当にいろいろなことを知っていて、例えば、当時テレビで盛んにやっていたクイズ番組の問題を彼が間違った姿を僕は一度も見たことがない。
しかも、頭がいいだけじゃなくて、手先が器用で料理の腕前もプロ並みだったし、そして、何より映画俳優顔負けのハンサムな容姿の持ち主だった。
ちなみに当時の父のルックスを分かりやすく説明すると、
舘ひろしからゴリラ要素を丁寧に抜き取った後に、英国紳士の気品を加えたようなルックスである。
確かにこれだけハイスペックじゃあついつい調子に乗って他人を馬鹿にするのも仕方がない、のかもしれない。
しかし、父が僕ら家族を馬鹿にしていた理由は実はそれだけじゃないことが、彼と同じくらいの年齢となり、そして、おそらくは当時の彼と同じような境遇に陥っている僕には何となく理解できるような気がする。
そうなのだ。
ちょうど40歳から50歳くらいにかけての父は、自分より明らかに頭が良くない人たち、仕事ができない人たちが自分よりも先にどんどん昇進していく姿を見て、明らかに辛そうだった。
当時、父は
「自分は中途採用で大卒じゃないから」
という言い訳をしきりにしていたけど、子供心にそうじゃないとも思っていた。
きっとついつい人を見下した態度を取ったり、職人気質で気難しくて意固地なところがあったりというその難のある性格のせいで、父は出世出来なかったのだ。
で、それって、まさしく今の自分だよな、ということに気づいたというわけ。
例えば、先日もうちの10歳の息子よりも明らかに覚えが悪くて、毎日、赤子に教え聞かせるように丁寧に仕事を教えたり、ありえないポカを侵すたびに僕がお尻を拭いていた同僚三人が、僕よりも先に昇格試験を受けていた事実を知って激しく心をかき乱されたばかりだし。
おそらく当時の父もまたこれと同じようなしんどい思いをしてきたのだろう。
そして、そのモヤモヤが溜まって(おそらくは無意識に)家族を馬鹿にしてそのルサンチマンを発散していたのかもしれない。
ちなみに僕も念の為、妻と息子に対して
「お父さんって、人を馬鹿にするイヤな奴かな?」
と確認してみたら、
「そうだよ」
と即答された。
やれやれ(笑)
まあ、さすがにあの頃の父ほどひどくはないと信じたいけど、やはり血は争えないものかもしれない。
ちなみに、この父の話には後日譚があって、50代になってから途端に出世し始めた彼は最終的には部下50人くらいを抱える技術部門のトップにまで登りつめた。
だから、僕もこのガンコな油汚れみたいに自分の心にへばりついた承認欲求を満たすためには、まずはそんな父に相談するのが一番かもしれないし、そうでもないかもしれない(何しろ生まれた時代が違いすぎる)
一方で、もしかしたら今の自分の状況にそんなに劣等感を抱かなくてもいいのでは?とも思い始めている。
何故なら、あの頃、確かに父が出世しなかったせいでうちは割と貧乏だったけど、だからといって僕はその暮らしに不満を感じたことはなかったし、あと父が仕事ができないダメ人間だと思ったことも一度もなかったからだ。
いや、僕にとっては会社からの評価なんか本当にどうでもよくて、むしろいつも頭が良くてハンサムな父は僕にとってずっと憧れの存在であり続けた。
唯一、そんな彼に馬鹿にされることだけがとても悲しかっただけである。
そう考えると、やはり、毎日、自分に自信が持てるような仕事をしっかりしているのであれば、どんなに会社で不遇な扱いを受けていたとしても、そんなのどこ吹く風でいつも泰然自若でどっしりと構えていた方が周りの家族や友人だって安心なはずなのだ。
まあ、実際、毎日、仕事は楽しいし、昨日も僕のことを
「うちの職場のブレーンです」
というふうに会社の黄金期を支えた元技術者のおじさまから紹介されるくらいには、バリバリ働いてもいるからね。
で、その話を家に帰ってから自慢気に家族に話したら、案の定、息子から
「また調子に乗って。そーゆーところだからね」
と釘を刺される始末(笑)
確かに僕の場合、気をつけないといけないのはむしろこっちのほう(お調子者な自分)かもしれない(笑)
ちなみに、そんな僕の見た目は、舘ひろしからゴリラ要素だけ残して、そこにカピバラを加えた感じのルックスである。