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カッコ悪いことはなんてカッコ悪いことなんだろう

これだよね。

これさえ肝に銘じて置けば、老若男女問わず、大概の人はそんなにおかしなことにはならないはずなのに、なんだかおかしな世の中になっているのはなぜざんしょ?

まあ、そんなことは実はどーでもよくて、

先日、僕はとてもカッコよかった。

不意に舞い込んだピンチに全く動ずることなく、素早くその場で何をすべきかを冷静に判断し、浮足出すみんなに的確な指示を出して、無事、ことなきを得たのだった。

このときの僕は、自分の脳内では、完全に

ザ・ファブルの岡田准一

もしくは

キングスマンのコリン・ファース

もしくは

キングダムの大沢たかお

と化していた。

そして、無事、ミッションコンプリートし、苦み走った顔でエレベーターに乗り込もうとした僕に、派遣会社の元締めのおばさんが話しかけてきた。

「今日の太郎さん、イカしてたわよ♥」

てっきりそう言われるかと内心、ドキドキしていたら、全く思いがけない言葉が彼女の口からついて出た。

最近、派遣の新人として、ぽっちゃりして年季の入ったフレッシュ感ゼロなおじさんが入ってきたんだけど、

「その人と太郎さん、そっくりですよね〜。」

と彼女はニコニコしながら言うのだった。

その瞬間、僕のザ・ファブルタイムは強制終了し、いつもの日常が戻ったのだった。

でも、不思議と水を差された感じは全然しなくて、むしろ水をかけて目を覚ましてくれてありがとう、と僕は心の中で彼女にお辞儀した。

そう、僕はどこにでもいるメタボな中年オヤジ。

決してみんなからカッコいいと言われる側の人間ではない。

でも、そんな僕にも、カッコいいって思われたい人は何人かいて、その人たちなら、きっと僕のカッコよさを分かってくれるはずだとどこかでうぬぼれていたりもいる。

うん、みんなじゃなくていいのだ。

でも、君にだけはカッコいいヒーローと思われたいから、僕はこんなにも頑張れる。

そして、出来れば、これを読んだみんなにもそんな人たちがいることを願ってやまない。

愛なき世界だと嘆く前に、できれば愛を与える人に僕はなりたい。

その日の帰り道、僕はそのうちの一人に向けてこんな歌を歌った。


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