【届かない手紙】拝啓 吉村 秀樹 様
先日、僕が社会人になって最初の職場で一緒だった同期の男性から何十年ぶりくらいに連絡があって僕が返事を出したら、
「何はともあれ生きててよかった」
というリプライが来て、それを見た瞬間、
そう言えば、あの頃の僕は、同期の中でいづれ自殺しそうだと噂されていた二人のうちの一人に入っていて、かつ、もう一人の子は実際、入社した数年後に会社で首吊り自殺したこと、
そして、新人研修の時にその自殺したNくんから、
「君って幸薄そうだね」
と言われたことを思い出した。
そんな洒落にならないくらいの黒歴史の持ち主だった事実をさっきまで完全に忘れていた自分に思わず笑ってしまったけど、
おかげさまで、あなたが亡くなった年齢を5歳も超えたのに、まだ僕はこうやってしぶとく生きている。
しかも、ただ生き延びただけじゃなくて、
僕は今、愛する家族やかけがえのない友人に囲まれて、
割と幸せにやっているよ。
あと、さっきおかげさまって書いたけど、
どうせこいつは勝手に死ねだろうと思われていた
あの自殺予備軍の青年が
こんな塩梅になるまでには
まあそれなりの
過程があったわけで
そして、その過程の中で
くじけそうになったり
人生を諦めそうになったとき
あなたの詩に、あなたの曲に、
そして、ライブハウスでノイズギターを鬼のような形相で奏でるあなたの姿に、
どれほど僕が励まされたか
どれほど僕が救われたか
なんて、
結局、僕がきちんとお礼を言う前に逝ってしまったあなたは知る由もないだろうけど。
でも、本当に今更だけどさ
そして、たとえそれが届かない手紙だって予め分かっていたとしても、
僕が真っ先に手紙を送りたいと思ったのは、
他の誰でもなく、あなただったんだ。
「伝説になんかなっちゃだめなんだ」
と言った翌年に亡くなるという
なんとも"らしい"伝説を作った
紛れもなく唯一無二の天才だったあなたと違って、
結局、天才じゃなかった僕は、
この歳になってようやくいろんなことに諦めがついて、
今はただ
平凡ながらも幸せなこの生活が一日でも長く続くように
って心の底から祈れるようになったんだ。
でも、そんなつもりもないのにあなたが救った
このちっぽけな命にも
あなたが命がけでガムシャラに追求した
創造と想像の炎が引火して
今もまだメラメラと燃え続けているんだよ。
でも、本音を言えば、
あなたがいないこの世界は
お行儀よくてちっとも五月蝿くなくて
やっぱり少し退屈だ。
でも、なんとかやっていくしかないんだよな。
だから、まあこれからも
天国でも地獄てもない
どっかから
見ててくれよな
吉村さん
松下友香さんの企画に参加させていただきました!素敵な企画をありがとうございました😊