後輩に仙人と言われた夜、ボクはパフェを食べた
約束していた昔の職場の後輩との飲み会の日。
先日、「糸が切れてしまいました」と言っていた後輩の心の糸はどうやら切れていなかったようだったから、ひとまず安心した。
泣きたきゃ貸すつもりだった肩も貸さずに済んだ。
というか、激しい競争社会の先頭を突っ走っている彼に対して、今のボクが何か言えることなんて何もないと思った。
むしろ彼の持つ、そして、かつての僕も持っていたであろう、自分の努力で出した成果は必ず報われるべきだ、という強い信念を眩しく感じたり、今やそれがすっかり漂白された自分に気づいて一抹の寂しさを覚えたほどだった。
けど、僕はそんな彼とはちょっと違う今の自分の仕事に向き合う姿勢や考え方について嘘偽りなく率直に話した。
すると、彼から
「N.O.T.Eさん、まるで悟りを開いた仙人みたいですねー」
と言われて、彼はもちろんそれを褒め言葉として言ってくれたのだけど、僕は内心、
「仙人って俺は世捨て人かよ」
と苦笑いをした後、
「まあ、ある意味そうかもしれないよな」
と納得したのだった。
けど、この日も彼とは真面目な話、くだらない話含めて本当にたくさんしたなあ。
そして、恒例の爆笑エピソード大会については今回は僕に軍配が上がったと思うぞ(笑)
二次会で行った新宿三丁目の雑居ビルで、僕らは夜パフェに舌鼓を打ちながら、飽きずにずっと話し続けていた。
そしたら、事前に調べていた閉店時間より早い11時半にお店が閉まってしまって、「えー、確か1時までだったはずなのに」と不服そうにつぶやく彼がなんだかかわいかったな。
うん、でも、僕もまだまだ話し足りないな、と思ってたよ。
大学の学部と学科とかつて勤めていた会社が同じだった先輩と後輩の僕らふたり
もうかれこれ15年くらいの付き合いだけど、気づいたら
僕は仙人、彼は世界を股にかけて活躍するエリートビジネスマンになっていた。
けど、会えば、ずっとお互い変わらずこんな感じ。
もちろんこの先、どちらかの気持ちが変わってしまって、全然会わなくなってしまっても構わないとも思っている。
むしろその方が人間としては自然な気がしている。
永遠の友情なんて、そんなものは僕には奇跡か魔法の類としか思えないから。
けど、それでも、僕はこれからもずっと
彼とこんな風に、会うたびにお互いの鎧を脱いで、
ときにはクソ真面目に、
ときには不謹慎に、
そして、
ときには娼婦のように、
終電間際まで話し続けたいと思っている。
そして、最後は必ずいつものようにお互いの夢を確かめ合ってから、硬く握手してバイバイするんだ。
だから、こんなところで、くじけているわけにはいかないんだよな。
さあ、今日もがんばるぞ!