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お父さんを笑わせるまでボクは、絶対に笑わないぞ!
冬休み最終日の1月5日
不覚にも僕はあることがきっかけで、ひどく落ち込んでしまった。
まぁ何というか、決して誰も悪くないのに、物事がうまくいかないときって、誰も悪くないからこそ、余計につらい気持ちになることってあるよね。
で、落ち込み過ぎてちっとも気丈に振る舞うことも取り繕うことも出来なかった僕は、ずっとうわの空だったから、家族にもずいぶんと心配をかけてしまった。
妻は「そんなに気にすることないわよ」と終始慰めてくれた。
息子はといえば、そんな僕のことをあえて見て見ぬふりして、ずっと自分の冬休みの宿題に集中していた。
昨日までは「こんなの終わるわけないよー」と泣き言を言っていたのに、このときはテーブルの前ですごく真剣な顔をしながら黙々と問題を解いていた。
そしたら、昨日の段階でまだ半分くらい残っていたドリルもあっという間に終わらせ、最後の書初めもぶっつけ本番の1回で書き上げてしまった。
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僕は直感で、彼はきっと自分が頑張る姿を見せることで僕を励ましたかったんだと思った。
そして、早めに宿題が終わって出来た余り時間で、僕らはまたドンジャラを始めたのだけど、このときも僕はまだうわの空だった。というか油断すると、目に涙が溜まりそうな状態だった。引きがよく大勝したのに、いつものように喜ぶ姿も見せられなかった。
そんな風に僕のせいで盛り上がりに欠けたドンジャラを終えた後、息子が
「こちょこちょ遊びをしようよ!」
と声をかけてきた。
実は、これってこの冬休みに彼がハマってる遊びで、とにかく僕が彼の脇とか足の裏をこちょこちょして笑わせるという原始的な遊びだった。
けど、このとき彼は、
「お父さんがいつものようにガハハと笑うまで、僕は絶対に笑わないぞ!」
と宣言して、実際、どんなに僕がこちょこちょしても顔を赤くしながら必死にこらえて一度も笑わなかったのだった。
その姿を見て僕は笑うどころか、涙を堪えるのに必死だった。
しかし、この攻防戦を繰り返していくうちに何となく心もほぐれていったのか、最後には彼と一緒になって、ケラケラと笑っていた。
「やったー!お父さん、やっと笑ったね」
と嬉しそうな彼。
うん、君のせいで思わず涙が出そうになるくらい笑っちゃったよ・・・。
そして、その晩、久しぶりに息子と風呂に入った。
どうやらさっきの僕の笑い方にまだ満足していなかった息子は、一緒に湯船につかりながら、江頭2:50みたいな変顔をして僕に顔を近づけてきた。それだけでも十分おかしいのに、このとき奇跡的に、彼の左鼻から、マンガみたいな鼻水がビローンと垂れてきたから、それを見た僕は思わず
「ガハハ!」
と大爆笑してしまった。
すかさず
「うるさいわよ、いったい何時だと思っているのよ!」
という妻の怒鳴り声が聞こえてきたけれど(苦笑)、
このときの息子の満足そうな表情を僕は一生忘れないだろう。
うん、世の中は不確かなものばかりでつい悲しくなってしまうこともあるけれど、
確かなもの
はここにちゃんとあるんだよな。