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田中1号、2号、3号

朝、職場で仕事の準備に取り掛かっていると、先輩の田中さん(仮名)に向かって

「大丈夫ですかー?無理しないでくださいね」

と彼を労る声が聞こえてきた。

どうやら田中さんが専任でやっている業務にトラブルが発生して、そのせいで昨晩、彼はほとんど徹夜で仕事をしていたらしかった。

実際、田中さんはしきりに汗をかいていて、相当疲れ果てているように見えた。

そして、この日、彼はシフト業務に就かなければいけない日だった。

一方、僕は一日中フリーだったから、

「僕が代わりにシフト入りますよー」

と言おうとしたのだけど、何とそれより先に

僕の右隣にいる神林さん(仮名)が

「私が代わりますよー」

と立候補の声を上げたのだった。

「お、おお…」

と先を越されて僕が少し動揺していた隙に、今度は僕の目の前に座っているミゲイラさん(仮名)から

「私もやりますよー」

という声が上がったから、結局、モタモタしていた僕は3番手になってしまった(苦笑)

そんな僕らに対して田中さんは

「本当にいいんですか。すみません・・・。」

としきりに恐縮していたけれど、その表情には明らかに安堵の色が浮かんでいた。

そして、

「せっかくだから3人交代交代でやりましょうよ」

と僕が提案すると、神林さんが

「じゃあ、私は田中1号ね!」

と言い始め、それにミゲイラさんが

「じゃあ私は田中2号」

と続き、最後に僕が

「田中3号行きます!」

と締め括ったら、オリジナルの田中さんを含めた四人から自然と笑い声が上がったのだった。

このときの僕らを包んだあのふんわりと優しい空気(アトモスフィア)は控えめに言ってもサイコーだったと思う。

その後、職場のパワーバランス(笑)によって、3号の僕が午前中いっぱい働いて、午後は田中さんが

「だいぶ楽になったので、あとはやりますよ」

と言ってくれたので、結局、田中1号、2号の出番はなかったのだけど(笑)

でも、正直そんなことはどうでもよくて、職場で困っている仲間がいたら、こんな風に気軽に助けようとする人たちが周りにいることに僕はいたく感動してしまった(だって、みんなそれぞれ自分の抱えている仕事があるわけだからね)。

これは間違いなく田中さんの人徳の成せる技ではあるけれど、それに加えて、やはり、自分の仕事に誇りとプロ意識を持っている者同士だからこそ出来た小さな奇跡だったとも思っている。

うん、だって、僕らは決して仲良しこよしでも友達でもなんでもなく、

ただただ共通の「目的」を持ってそれぞれの仕事に真剣に向き合っている

単なる仕事仲間

に過ぎないからだ。

そして、実はこのようなやり取りは、5年前の僕らだったら到底考えられないことでもあった。

その事実もまた何気に僕がスマブラの変態仮面、もといキャプテンファルコンみたいにプルプルと感動に打ち震えていた理由のひとつである。

そう、決して歩みは早くはないけれど、この5年の間に

僕たちは確実に成長していたのである。

うん、控えめに言っても、

これってやっぱり

サイコー!!!

だよね。


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