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まあ、ボチボチ行こうぜ!マイヒーロー
2ヶ月くらい音沙汰なかったのと、例の一件のことが気になったので、彼にラインをしたら、その2日後に電話が来た。
「ご無沙汰だけど、最近どうだい?」
「ああ、まあ、ぼちぼちかな」
と相変わらずマイペースでぼんやりとしたリアクションだったから、僕の方からあの話題を振ってみた。
「結局、あれから娘さんに会えたんだっけ?」
そう、8月のお盆休みに、彼は離婚調停中の奥さんの実家にいる娘さんと合う約束をしていたのだけど、奥さんからなかなか連絡がこなくて、ヤキモキしていた、というところで、音信不通になっていたのだった。
「ああ、当初予定していた日帰り旅行は駄目だったけど、なんとか会えたよ」
うん、それはよかった。でも、その割にあまりうれしそうじゃないなあ。GWに娘さんと会ったときは、あんなにうれしそうだったのに。
そしたら、彼の口から、問わず語りにポツポツとこんな本音が語られ始めた。
「なんか学校終わったら、友達とも遊ばずに、すぐに家に帰ってるみたいなんだよな。この年頃って、俺たちは放課後、校庭で日が暮れるまで遊んでたよなあ」
いまどきの子は、割とインドア派だし、家でもオンラインで友達とゲームしてるかもよ
とフォローしながらも、彼が娘さんを心配する気持ち、そして、父親のくせに何もしてあげられないもどかしさみたいなものが痛いほど伝わってきた。
けど、それって少なくとも今はどうしようもないことだから、僕はひとまず話題を変えることにした。
「ところで、仕事の方の調子はどうだい?」
すると、明らかに彼の声のトーンが明るくなったのが分かった。
「ああ、最近は昨年みたいな激務は落ち着いてきて、ようやく自分のペースでできるようになったよ」
それは、よかった。本当に、よかった。
ひとまず安心した僕は
「こっちも色々と話すネタが溜まってきたから、また近々飲みに行こうぜ」
と言って、電話を切った。
大学で初めて彼と会ったときには、思わず目を丸くした。
この世には、こんなにも粗暴で鬼畜な人間がいるのか、と。
と同時に、こうも思った。
こいつとはおそらく一生の付き合いになるだろうな、ってね。
そして、その感想はあれから20年以上経った今でも変わらない。
二年前のクリスマスイブに出張先の大阪から娘さんのプレゼントを携えて帰ったら、家がもぬけの殻だった、というエピソードを聞いたときも、
やっぱ、こいつ持ってるわ!
と思ったくらいだったし(笑)
けど、唯一、想定外の出来事があるとしたら、それは、こんなにも彼の存在に絶えず自分が勇気づけられたり、励まされたりするなんて夢にも思ってなかった、ってことだ。
いや、本当はそれすら気づいていたのかもしれない。
どんな逆境をも(良くも悪くも)見事に跳ね返す鋼のハートの持ち主。
ここだけの話、おまえは、ずっと僕の憧れのヒーローだったんだよ。
もちろん、ばりばりヒールの方だけどな(笑)