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ヘーベルハウスのおもひで

1999年初夏 下北沢

当時、僕がお気に入りだった雑貨屋さんを目指す道すがら、突然、彼女がこんなことを尋ねてきた。

「◯◯くんは、将来、どんなお家に住みたい?」

僕は、ほぼ反射的に(たぶん彼女に笑って欲しくて)

「ヘーベルハウス!」

と即答したのだった。

そしたら、こちらの思惑通り、彼女は軽やかに吹き出して、このときの青空には確かに

ケラケラケラ

という彼女の笑い声がぷかぷかと雲のように浮かんでいたのだった。

それから、四半世紀が過ぎて、全くの偶然の賜物ではあるけれど、突然、その僕の夢が叶って、何となく狐につつまれたような不思議な心持ちになっている。

とは言っても、それは立派な一軒家ではなくて、わずが60平米の賃貸住宅

へーベルメゾン

というヤツなんだけど。

そして、今の僕の隣にいるのは、あの彼女、でもない。

でも、何故だろう?

ようやく僕たちのホームを見つけることができた

そんな力強い手応えを感じているのは。

もしかすると、それはヘーベルハウスの特徴である高い耐震性に基づく安心感ゆえかもしれない。

しかし、これまで悲喜交々のたくさんのドラマを家族3人でガチンコで体験することで、

僕らもようやくそれなりの家族になれた

という自分の心境の変化も大きく作用しているような気もしている。

うん、家があるから家族なんじゃなくて、

家族がいて、はじめて家はできるのかもしれない

なんてな!

そして、あのときの彼女もまた、きっと今頃、素敵な家族に囲まれながら、またどこかの青空に、あのケラケラという気持ちのよい笑い声を浮かべていることだろう。

うん、きっとそうに違いない!




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