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地球に住んでる人だから

先日、あるnoterさんがお勧めされていて、是が非でも見たいと思っていたコンパートメントNO.6を昨晩ようやく見ることができた。

結論から言うと、すごくよかった。

自分がひどく落ち込んでたり、寄るべのない心境なときに、そんな自分に寄り添ってくれるさりげない人の優しさに触れると、自分でも想像もしないようなエネルギーがみなぎってくる。

すんごくざっくりと言うと、そんな気持ちを思い出させてくれる映画だ。

鑑賞後、帰りの電車の中でパンフを広げながら、ずっとあの世界観の余韻に浸っていたし。

いい映画だったなあ。

それにしてもこの映画の特徴は、やはり異国の地にいるときの、あのなんとも言えない宙ぶらりんな空気感を見事に再現している点だ。

例えば、オンボロの車の中で、こっちの気持ちとか全くおかまいなしに、突然、謎にテンションの高い地元のヒット曲が流れてきて思わず笑ってしまう感じとかめちゃくちゃよく分かる。

ソウル、台北、バンコク、ジャカルタ、上海、西安、マニラ、シンガポール、オークランド、ロサンゼルス、ラスベガス、シカゴ、ローリー、マイアミ、ファーゴetc.

振り返ると、僕も案外、いろんな街を訪れていたのが分かる。

しかし、普段あまり思い出すことはないのは、どうしても挫折感で苦い気持ちになるからかもしれない。

そう、僕は、人生のある時期、これらの街を観光ではなく、セールスエンジニアとして飛び回り、結局、何一つ商談を成約させることが出来なかったからだ。

プレゼンの時は、必ず英語の原稿を書いて、行きの飛行機の中でそれを何回も暗唱して頭に叩き込んでから本番に臨んだ。

受けがいいときも悪い時もあったけど、毎回、本当のところはどうなのか、が分からなかった。なにしろ話している当の本人が、これで本当に伝わってるのかいつも半信半疑だったからだ。

まあ、そんな調子だから、当然うまくいくわきゃないよね。というか、おそらく敗因はそこじゃないんだけど、そんなことも分からないくらい、当時はただガムシャラで気持ちの余裕なんて一ミリもなかった。

でも、今、振り返ってみると、間違いなく僕はあの街に行ったんだよなあ、という実感が込み上げてくる。

ジャカルタの場末のスナックで泣きながらサライを歌う駐在員のおっさんの横顔とか、

夜、バンコクの屋台で買ったパインの串刺しがアホみたいに美味かったこととか、

マニラの雑踏の中で出会ったたくさんの花売りの少年少女の姿とか、

トランジットのテキサス空港の白人スタッフに嫌がらせされて、そのあと、テイクアウトで食べたプリッツェルが馬鹿みたいに美味かったこととか、

ファーゴにあるイタリア風ファミレスで、現地スタッフのベルナルドと話していて、こいつは本当にダメな奴だな、と思ったこととか(笑)

カルフォルニアの空は本当に青かったこととか、

ニュージーランドの片田舎で食べたインドカレーが自分が人生で食べたカレーの中で一番美味かったこととか、

キリがないからこの辺でやめておこう。
というか我ながら食べ物の話ばかりだけど(笑)

もちろんただ体験をしたというだけで、そこで何かを学んだり、成長したわけでは全然ないけど、言葉もほとんど通じない異国の地でひとりきり、自分が何者でもなく、ちっぽけな存在であることにただただ身につまされていた体験は、今の自分の人格形成に少なからず影響を与えているような気がしないでもない。

まあ要するに叶った夢の数より、叶わなかった夢の数の方が圧倒的に多い人間というだけの話かもしれないけど。

でも、だからこそ、今もこうやって、たやすく自分とか人生とかこんなもんだよね、などと決めつけずに、やっていけている気もしている。

何気にまだ海外で一旗上げたいと思ってたりするしね。

全く懲りないやつだ!





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