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はじめての恋が実ったその瞬間、私は怖気づいて逃げ出した
2月。きれいにラッピングされたチョコレートが店頭に並び、私にとってはクリスマスの次にワクワクする季節だ。
ここ数年は、夫と息子に渡すチョコレートを選ぶのが楽しみに。今年はどれにしようかな〜
甘くて、情けなくて、ピュアで、ビターだったバレンタインデー
ところでバレンタインが近づくと、今でもほーーーーんの少しだけ胸がキュッとする思い出がある。
地元の小学校から中高一貫の女子校に入学して、1年目が終わろうとしていた頃。私には、ずっとメールを続けていた男の子がいた。小学校の同級生で、彼も中高一貫の男子校に進学していた。
たぶん小学生のときから、お互いちょっと好きだったんだと思う。卒業するときのメッセージカードでメールアドレスを交換してから、ずっとメールのやり取りが続いていた。
そんなときに巡ってきた2月。冗談めかして投げかけられた「チョコくれよ!」の言葉を発端に、バレンタインデーの放課後待ち合わせをすることになった。
愛する同級生女子たちのために大量生産したチョコレートをデカいタッパーに詰める傍ら、ドキドキしながら親に内緒でこっそり1つだけラッピング。通学カバンに忍ばせた。
卒業以来の再会に、胸躍らせながら待ち合わせ場所へーー
久しぶりに再会した彼は、想像より背が高かったし、野球部だからか逞しくなっていた。
そんな彼を目の前に、私は
完全に面食らっていた。
足が速くて、つるんとしたほっぺに無邪気な笑顔を浮かべた小学生時代の彼をベースに、1年間のテキストのみのやり取りを通して、ドラマやマンガ由来の男子イメージを脳内補完しまくっていたのだ。それはもう、コッテコテに。
完全に、女子校生活の弊害である。
目の前にいるリアルな同世代男子と、勝手に作り上げていたつるっとした2Dな彼との違いに脳の処理が追いつかずフリーズしていた。
そのあとは記憶がない。脳がフリーズしたまま、たぶん口だけペラペラ世間話をしたのだろう。帰り際にチョコを渡したら告白されて、上の空のまま恐らく「はい」とか言ったのだと思う。
そのままボーっと自宅に戻り、自室で座り込んだ。
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遠くでポワポワ浮かんでいた「恋」がリアルになった瞬間、私は尻尾を巻いて逃げ出した。
「ごめん、やっぱり私、付き合うとかできない」
メッセージを最後に、長らく続いた彼とのメールは終わった。ノリノリでメールを続けた挙句にチョコまで渡しておいて音速で振る、訳のわからない女である。
こうして私は、「うんこ」や「おなら」でゲラゲラ笑い転げる小学生男子レベルの清くてアホで美しい中高女子校ライフに戻っていった。ちなみにそのまま、卒業するまで「うんこ」で笑うことになる。
甘かったような、罪悪感でビターだったような。情けなくてピュアだった中1のバレンタインの話。