ブーメラン

『特大ブーメン刺さってるよ』
中学の部活でしか使われていない呪言である。
『あいつマジで部活サボるよな』
『いや，お前特大ブーメン刺さってるよ』

『なんで，お前遅刻してんねん』
『いや，お前特大ブーメン刺さってるよ』
『3分は遅刻じゃないだろ』

『あいつ今日めちゃくちゃシュート外すな』
『いや，お前特大ブーメン刺さってるよ』
『俺はその分，点とってるわ』

使い方としてはこんな感じである。誰が流行らしたのかもわからないが，多分、部活サボり癖のAくんか遅刻癖のBくんである。3年間毎日一緒だったのだからなんとなく見当はつくのである。
とりあえず，よく使っていた呪言である。他人に厳しく，自分に甘い，行動と言動に矛盾のある中学生達にはこの言葉の使いどきはいくらでもあったのだ。
そして，この呪言を呪言べくしてあるのは，相手のことを皮肉りながら，ひとつまみのユーモアを含むからである。相手としてもこの言葉にキレるのは周りから見てもナンセンス扱いなのである。
つまるところ，ノーリスクの即効性・攻撃性を兼ね備えた切り札なのである。遊戯王だったらすぐ禁止カードになるだろう。
しかしながら，この切り札を無効化する最強タフ野郎が現れたのである。同じクラスの野球坊主のCちゃんである。どんだけCちゃんにブーメランを刺しても，オガちゃんのブーメランはオガちゃんに返ってこない，それどころか『お前何言ってんの？』『つまんな』のちゃんとしたキレ芸をお披露目してくれるのである。この時，部活内でしか使えない呪文カードはもはや弱いエリア魔法とかしたのである。そしてこれが1日のうちの出来事である。驚きである。