月と六ペンス サマセット・モーム:著
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原田マハのリボルバーを読んで、ゴーギャン、ゴッホをもう少し深めたいと思い手にとった。この物語がゴーギャンに着想を得たのは間違いないのだろうが、実際には全く独自の物語であった。本書の扱うテーマは現代人にとって益々、切実なものとなっているだろう。また、グローバル化し、画一化されつつある世界においては、決してたどり着けない夢物語となってしまっている。物語の終盤で、エイブラハムという医師の話が突然出てくるのだが、彼のエピソードが非常に分かりやすく本書の主題を表しているような気がした。彼は誰もが羨む才能を持ち、富と名誉が約束されていたにも関わらず、旅行でアレクサンドリアに立ち寄った際にまるで神からの啓示のように、こここそが自分のいるべき場所だと感じ、全てを投げ打ってそこに住み着いてしまう。後悔した事はという問いに彼は言うのである「いや、一瞬たりともない。食べていくだけで精一杯だが、満足している。望みはこの地で死ぬことだけだ。すばらしい人生だと思っている」素晴らしい人生とは何なのか?多くの人はその問いを見て見ぬふりして生きている。