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お寺で会った方

あらかじめ宣言しておきます。
私、スピリチュアル系の人間ではありません。
お寺や神社を、時々お参りする日本ではよくある宗教観の持ち主です。

以前は占いとかスピリチュアル系の番組も娯楽として楽しんで見ていたけれど、東日本大震災の後からは見なくなりました。

それでも全ての不思議を否定できないエピソード。

幼い頃から長い間、病気と闘った従兄弟がいます。
病名は、今も同じ病気の方が多くいらっしゃるので伏せておきます。

従兄弟の家族はとても強い絆で結ばれていましたが、弱気になることも当然あります。

ある時、心身ともに疲れた彼のお母さん(私の叔母)に新興宗教の人が助言をしました。
「うちに入信すれば、とにかく心が軽くなるから」
この辛い気持ちから逃れられるなら、と揺れたそうです。

この時点でどんなに辛かったかわかります。
今は他の親戚が継いでいるとは言え、彼女はもともとお寺の娘でしたから新興宗教とは遠い筈なのに。

入院中だった息子に入信の相談しました。
「お母さんが、そうしたいのなら俺は反対しないよ」
優しい青年でした。

しかし、翌日病院を訪れると
「お母さん、昨日の話だけどやっぱりやめてくれないかな」
「どうして?何かあった?」
「昨日の夜中に病室に来た人が、そんなの必要ないって言っていたから」

その頃、お寺の近所に住んでいた私に叔母から連絡が来ました。

息子から言われた内容の後に「お寺の納骨堂に行ってほしい」「そこでお礼をしてきて」

イヤじゃい!
叔母たちには生まれ育った家かも知れないけど私には遠縁のお寺。
祖父母のお墓にはよく行っていたから大丈夫だけど、納骨堂へ一人で?しかも、地下にあるし…。
怖いさ。
勘弁してください、と言いたかったけど叔母の気持を汲んで了解しました。

次の休日、こわい〜と思いながらお寺に行きました。
納骨堂にそんなのあった?ひとりで地下の納骨堂、いやだ〜。
全く乗り気じゃないです。

地下への階段は(ひやり)として怖っ。
納骨堂に入った私は「あ…、」と小さな声で言ってしまいました。

「昨日の夜に病室に来た人が、そんなの必要ないって言っていたから」
「誰が来たの?男の人?女の人?」
「男でも女でもない」
「そうなの?じゃあどんな人?」
「手がいっぱいあった」

納骨堂の棚には(千手観音)の像がありました。
怖い気持ちは消え、この方が従兄弟の所に行ってくれたんだ、と確信して手を合わせました。
「ありがとうございます」

残念ながら、従兄弟は亡くなってしまったので確認はできません。

冷静に考えれば
彼は千手観音の存在、呼び方は知らなくても、観音像はTVなどで見たことがあって、夢に出てきたことを母親に話したら、元実家にあった千手観音像と結びつけた、というのが現実的かと思います。

ただ、千手観音像を目にした瞬間に私の恐怖が消えたのは本当です。
ま、私もその気になりやすいタイプなので…。

何より、人生のほとんどを病気で自由に楽しめなかった従兄弟が痛みから解放されて、納骨堂にいらした観音様のような優しい表情の方の側に居られたら良いな。

そう思うと、叔母が信じたストーリーが本当である事を願っています。






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