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#43 リバー、流されちゃいなさいよ
今年も鴨川デルタ向いの葵公園で開かれた野外映画上映イベント『カモシネマ19』に参加させて頂きました。
上映作品は『リバー、流れないでよ』。
昨年の『サマータイムマシン・ブルース』と同じく、原案・脚本は上田誠さん。監督は山口淳太さんでヨーロッパ企画制作によるオリジナル長編映画である。
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昨年の『カモシネマ18』は上映直前に雨が降り、現場で中止か決行か実行委員会の判断を待つ事態になったが、今年も上映の3時間前からどんよりとした雲が立ち込め、心配になって雨雲レーダーを見ると、緑や赤の如何にも危険そうな雨雲が近くにあり、今にもドバッと降り出しそうな空模様だった。
映画上映前の実行委員や鴨川を美しくする会の方の開会の挨拶時には、滋賀方面の空が何度も光った。
昨年とは稲光が発生している方向は違うもののタイミングやシチュエーションはほぼ同じである。
運営の学生さんも気が気じゃなかったに違うない。「うわ、何という既視感」と口々に話するのが聞こえてきた。
昨年の惨状を覚えている者はきっと胸の中で雨が降らないことを祈り続けていたことだろう。
そしてその祈りが通じたのか、遠く東の空で暗雲がで雲が何度も発光するものの、映画が上映している間雨粒が降りてくるようなことはなく、我々は無事に映画を鑑賞することができた。
***
映画の舞台は京都の貴船。
ちょうど我々がいる鴨川デルタの西側——賀茂川の方を上っていた先、貴船川の辺にある老舗料理旅館『ふじや』の人々が、突然繰り返す2分間のループから抜け出せなくなった混乱を描いたコメディー作品。
この2分というのが長回しで劇中でも毎度きっかり2分間である。
その2分間という長さが絶妙で、ループを36回繰り返し見せられるのだが結果として飽きずに見られるし、2分という制限の中でここまで表現できるのかと感心した。
毎回リセットされる時間の中で、登場人物たちが突然の2分ループをどのように理解し、受け入れ、どうにか原因を見つけ出し解決しようという様が面白い。ストーリーが進むにつれ、それぞれが勝手に動き回り、統率が取れなくなるのが何とももどかしく笑える。
脇を固めるすっかり“京都ゆかり”の俳優となった近藤芳正(宿泊中の作家)や本上まなみ(ふじや女将)、エンドロールのくるりの曲もいい味を出していた。
ゆかりといえば、ロケ地の旅館『貴船ふじや』は主演女優藤谷理子さんのご実家らしい。
勝手知ったる実家で映画を撮るなんてなんだかすごく照れ臭い気がする。
劇中どうしても気になってしまうのが、雪が降っているシーンと降っていないシーンがストーリーに関係なく混在している点だ。
撮影中、10年に1度の大寒波に襲われ、4日間撮影中止になったという。雪が降っていたり、止んでいたり、積もっていたりと画が繋がらないという気象の影響が色濃く出てしまっている。
しかしそんな状況をも楽しんでしまえという現場の機転が見えるようで素晴らしい。その場で「世界線がズレている」という台詞を入れて、無理矢理便利な言葉『世界線』で片付けてしまっているのだ。
物凄く粗くて強引だけど、逆境を逆手にとったことでライブ感も生まれ良かったと思う。
『リバー、流れないでよ』。
去年の『サマータイムマシン・ブルース』に続き、なんちゅーか、肩肘張らず頭を空っぽにして夏の葵公園で鑑賞するにまさにうってつけの映画だった。
カモシネマ20、来年は何が上映されるのか今から非常に楽しみである。
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