#15 和田誠展に行ってきました
2023年6月3日。
半年近く前の話になってしまいますが、『美術館「えき」KYOTO』で開催されていた『和田誠展』に行って来ました。
和田誠さんは多才な人だ。
イラストレーター、グラフィックデザイナー、エッセイスト、映画監督……。
Wikipediaに記されている肩書きだけでもこんなに沢山ある。
多才といえば、和田さんのご家族も凄い顔ぶれです。
父…和田精(『ラジオの神様』と呼ばれた音響演出家)
妻…平野レミ(料理愛好家、シャンソン歌手)
長男…和田唱(TRICERATOPSボーカル、ギター)
長男の妻…上野樹里(女優)
次男の妻…和田明日香(タレント、美容料理研究家)
表舞台でご活躍されているご家族を見ただけでも、一癖も二癖もある曲者ばかり。和田家は海千山千の猛者どもの巣窟です。
特に女性陣なんて見るからに気性が強く、私のような者が近づこうものなら雲散霧消してしまうような迫力があります。
そんな一家の中心だった和田誠さん。
映像や写真で拝見するお人柄や作品から感じる世界観から、きっと大らかで包み込むような包容力があったんだろうと想像します。
和田さんの作品でまず浮かぶのが、小学生の頃読書の楽しみを教えてくれた星新一のショートショートの表紙絵。
星新一の近未来感や風刺のきいたユーモアを和田さんの描く世界観が見事にマッチしていて、本編を読む前にイラストからお話を想像する楽しみを教えていただきました。
(余談ですが、星新一の挿画といえば真鍋博さんの絵も良かった。和田さんの絵が可愛らしくホッとする感じがするのに対し、ちょっと無機質でよりブラックな印象を受ける真鍋さんの絵は子供心にゾクっとしたものでした。)
喫煙を覚えた頃、自販機でよく見かけたハイライトのパッケージデザインにも魅了されました。
味は好みではないけれど綺麗なパッケージデザインに惹かれ、手に取りたくてつい自販機のボタンを押すこともありました。
何年か経つと「あの味が分かる大人になったかも……」と期待して再び吸ってみるんだけど、やっぱり駄目で全部吸いきれない。
(こちらも余談ですが、私にとってドクターペッパーの味も同じような感じです。)
子供の頃から本屋に行くと必ず見かけた、40年書き続けたという週刊文春の表紙絵も脱帽です。
雑誌の表紙イラストという点で、「ぴあ」の及川正通さんの「同じ雑誌の表紙イラスト画家として世界一長いキャリアを持つ人物」というギネス世界記録登録も途轍もない記録ですが、発行間隔が月刊だったり隔週刊だったり週刊だったりとバラバラなので一概にどちらが上というような話は出来ません。こち亀の秋本治とゴルゴのさいとう・たかをの関係にちょっと似てるかも知れません。
フジテレビ『ゴールデン洋画劇場』のオープニングアニメーションもこれから始まる映画をワクワクしながらTVの前で待った情景は、少年時代の原風景として記憶に残っていますし、未だ鑑賞に至っていないが、レンタルビデオ店行くと邦画コーナーで見かけた『麻雀放浪記』『怪盗ルビイ』も死ぬまでに見ておきたい映画だと思っています。
こうして少し振り返っただけでも、昭和平成の時代はそこかしこに和田さんのお仕事があり、我々の生活に密着していたんだなと再確認しました。
展覧会の展示は、和田さんの少年時代の落書きから始まり、年代別、ジャンル別に作品を見ることができ、83年の生涯で制作された膨大で多岐にわたる仕事を振り返ることができます。
順番に鑑賞し、この日1番目に止まったのは、こちらの作品でした。
『和田誠漫画集 サニーサイドアップ』の中の一編です。
テーブルクロスが敷かれたテーブルにエッグカップに乗ったゆで卵がある。
椅子に腰掛け前掛けをした男がスプーンをゆで卵に落とすと、ゆで卵は無傷だが自身の頭が割れている。
題名をつけるとしたら何だろう。
今風につけると、『ブーメラン』かな。
クロスが敷かれたテーブルで前掛けをしてエッグカップに立てたゆで卵を頂く少し気取った食事。さあ、いただこうとする瞬間、天罰が下る様を卵という食材で表現しているのが素晴らしい。ユーモアきいてるな、めっちゃ洒落てるなって思って、写真まで撮ってしまいました。(写真撮影OKの展覧会です)
この卵男のように人畜無害みたいな顔をしている人こそ、本当は油断のならない人なんだろうな、クワバラクワバラなんて思いながら展覧会を後にしました。
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