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猫の奴隷
この前、久しぶりに引っ張り出してきたGO!GO!7188のカバーアルバムを聴きながら、車を運転していた。昭和の歌謡曲などが入っている。奥村チヨの「恋の奴隷」のカバーが流れてきた。
恋の奴隷
あなたと逢ったその日から
恋の奴隷になりました
あなたの膝にからみつく
小犬のように
だからいつもそばにおいてね
邪魔しないから
悪い時はどうぞぶってね
あなた好みのあなた好みの
女になりたい
あなたを知ったその日から
恋の奴隷になりました
右と言われりゃ右むいて
とても幸せ
影のようについてゆくわ
気にしないでね
好きな時に思い出してね
あなた好みのあなた好みの
女になりたい
あなただけに言われたいの
可愛い奴と
好きなように私をかえて
あなた好みのあなた好みの
女になりたい
…まるで私のようだ。
おそらく猫を飼って以来、私は「恋の奴隷」ならぬ「猫の奴隷」だ。自ら望んで、猫の言いなりになっている。彼には敵わない。
何か言いたげに、
「にゃーん。」
となかれたら、途中の作業を放り出してでも、そばに行ってしまう。こちらを窺うように、ドアのところから覗く猫。近くによれば、ダッシュで逃げる。追いかければ、机の下に隠れる。それなのに、私が諦めて離れたら、また物言いたげな様子で、
「にゃーん。」
となく。私はそれに応えて、子どもにさえも使ったことのない猫なで声で、返事をする。もうだめだ。人には恥ずかしくてみせられない。
朝急いでお弁当を作っていても、猫が来てスリスリすれば、手を止めて、しばらくなでてしまう。仕事に行こうとしていても、猫が家のどこにいるかを確認するまでは、気になって出発できない。しかも、呼んでも出てこないし、そんな時に限って返事もしてくれない。
お風呂上がりは、ドアの外で出待ちをしている猫の相手をする。化粧水をつける間も無く、猫が頭突きをしてくる。それに応えて、屈み込み、私も頭を差し出す。思う存分頭突きをして、猫の気が済んだら、ようやく化粧水をつけ、ドライヤーをかける。
さて、いざ寝ようと寝室に行くと、ベッドの真ん中に猫が寝ている。体を伸ばして気持ちよさそうに寝ている。部屋に入った私をチラリとみて、また何事もなかったように眠る猫。邪魔するわけにはいかないので、私はベッドの隅っこに小さくなって寝るしかない。
夜中になると階下で、
「にゃおーん。」
となく。いつまでもなく。しかも、わざわざ哀れっぽい声でなく。眠たい目をこすりながら、行くしかない。階段を降りる。そして、また逃げられる。
文章にすると、こんなにも手がかかるのに、それでも、それでも、よろこびしかない。こんなにもかわいい存在がいることがすばらしい。うちに来てくれてありがとう。今日は記念日。