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里帰り

 1年ぶりに実家に帰ってきた。本当は30日まで仕事だったけど、有給をもらって29日から帰った。久しぶりの実家、相変わらず忘れっぽい母の様子に少し不安になる。

 父の仏壇に手をあわせると、仏壇の中に手紙が置いてある。

「娘たちへ」

母からの手紙だ。「読んでいい?」と聞くと、「いいよ。」とのこと。自分に何かあった時の意思表示の手紙だった。延命治療を望まないこと、私たちへのお礼が書かれてあった。

「これでいいかな?」

と母が言う。最後の時に、これで自分の意思が伝わるかどうかということだと思う。自分で呼吸できなくなった時に、それ以上の治療は望まないということ。私は、付け足して母に尋ねた。

「口からご飯が食べられなくなった時はどうしたい?鼻から管を入れて、経管栄養とか、胃に穴をあけて胃瘻とか、末梢点滴でなく中心静脈栄養にするとか、選択肢はいろいろあるけど。」

「食べられなくなったら、なんにもせんでいい。そこまでして生きたくない。早くお父さんのところに行きたいのに。」

 母はもう色々なことへの執着が少ないのだと思う。忘れっぽいのも、それがひとつの原因としてある気もする。周りへの興味が少ないから、聞いてもすぐに忘れてしまうのかもしれない。もちろん、ほかの原因もあるとは思うのだが。


 延命治療に関して、私は母の考えに異論はない。今のところ、特に何か病気を抱えているわけでもない。「もしも」の時のことだ。それでも、しっかり話ができる今のうちから、話をしておくことは大切だと思った。私は母の意思を尊重したい。私も母と同じ選択肢を選ぶだろうから、母の気持ちはよくわかる。


 そんなこんなで、大晦日になった。今私はコインランドリーにいる。家族の大量の洗濯物を乾かすためだ。洗ったまま、干し忘れていたのだ。母も私も。誰もいないコインランドリーもいいものだ。今年が終わるなあ。母は、今みんなの夕食の準備をしている。来年もみんなが穏やかに過ごせますように。


 来年の春で、私がnoteを始めて2年になる。ここでの交流は、私にとって大切なことのひとつになった。記事を読んだり、読んでいただいたり、コメントをしたり、コメントをもらったり。
 本当にありがとうございます。また来年も、ぼちぼちと更新していけたらなあと思います。よいお正月をお過ごしください!


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