
結婚して灰かぶりになってた話
シンデレラの邦題?は「灰かぶり姫」だ。
物語の前半が「灰かぶり」でラストが「姫」。
物語を上手いこと集約したタイトルである。
前半は、文字通り継母と姉たちにいじめられて家の仕事を押し付けられて、灰かぶって暮らしていた。でも魔法使いの魔法できれいな姫に変身して行ったお城の舞踏会で、王子様に見そめられる訳だ。
私は結婚前、姫になることを夢みて結婚したらこの人が私を幸せにしてくれるんだ!と思っていた。
そもそもこの考え方自体が今となってはツッコミどころ満載なんだけど、それは一旦置いておく。
結婚式から新婚旅行くらいまでは姫まっしぐら状態だった。
結婚式なんて、ドレス着て夜会巻きして、ティアラつけて、みんながフラワーシャワーしてくれて、もうガチプリンセスじゃんと思った。
しかし、実際に「暮らし」が始まると、「姫」から「灰かぶり」に転落した。
逆シンデレラだ。
とはいえ、別に夫に虐げられていたとか、いじめられていたという話ではない。
別に彼は結婚前と何も変わっていなかったと思う。
私が勝手に「姫」になって、勝手に「灰かぶり」に転落したのだ。
一人暮らしをしたことがなかった私は家事の大変さを初めて知った。
家事は面倒くさくて嫌いだけど、汚いのも耐えられなくて(夫は家事が嫌いで、汚いのも大丈夫なので何もしない)どんどんストレスが溜まっていた。
それでトイレ掃除やら、排水口掃除なんかをしていると、猛烈な虚しさに襲われ、「私ってこんなことするために生まれてきたんかな...」とか「私ってこんなことするために結婚したのかな」などと考えながら、本当に「灰かぶり」さながら泣きながら家事をする始末だった。
ちなみにこの頃、ファンを「姫」と呼んでくれるアイドルの推し活に没頭していた。現実世界で「灰かぶり」として生きてる自分も、彼を追っているときだけは「姫」になれると信じていたようだ。
書いていて思ったけど、私は「姫」になりたくて、自分を「姫」にしてくれる誰かを求めていたんだな...。
なぜ「姫」になりたかったのかというと、元々少女漫画やディズニー、アイドルなどが好きで少女趣味の私は「姫」=「幸せ」と無意識に思っていたからだと思う。
で、その「姫」の特徴として、自分の力で幸せになるのではなくて「王子様」に出会うことで、偶然にも幸せになれちゃうという昔ながらのお伽話が、もう骨の髄まで染み込んでたのかもしれない。
だって、シンデレラも白雪姫も王子様が迎えにきてくれるし、少女漫画も学年一のイケメンに平凡な女の子が見そめられるのが鉄板だったし。
幼少期からの刷り込み効果ってなかなかのものがある。
私が子供時代のアニメの中の妻は全員専業主婦で(ちびまる子ちゃん、サザエさん、クレヨンしんちゃん、あたしんちなど)
結婚したら専業主婦になると思ってたし、ディズニーや少女漫画の影響で姫願望も強くなってた。
22時まで残業して、帰ったら家事して、休日はトイレ掃除やらトイレットペーパー買いに行くとかに追われてる自分が本気で「灰かぶり」に思えたのも、無理はない...かも?
かなり痛いけど。
それで灰かぶり生活をしていた私に、ある日夫が「会社の人に新婚なのに、愛妻弁当じゃないの?って言われたよー」と言ってきて、何かがプツンと切れた感じがした。
「コイツどんだけ私に灰かぶらせれば気が済むん?」という心境だった。
でも今なら、なんとなく分かる。
私が結婚したら姫になると思ってたのと同じように、夫にも思い描いた理想の新婚生活があったのかもしれない。
新婚早々、妻がアイドルに入れ込み自分に対しては不機嫌に振る舞ってくるというのは、夫からすれば理解不能だったろう。
ちなみに結婚から10数年が経った今、一番夫婦関係が良好だと思う。
今が一番、私が私のままでいられている気がする。
姫になることも、灰かぶりになることも、被害者になることも、良い妻、良い母を演じることもなくなったのだ。