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海外投資家からの大型資金調達がもたらしたもの~シリーズB 70億円調達を振り返る~

“ログラスnote駅伝”とは?
箱根駅伝の名物といえば、“山登り”。新年をさらに勢いづけていくために、
12月アドカレを走り切ったプロダクトチームからたすきを受け継ぎ、ログラスで「山を登った」エピソードをビジネス部門・バックオフィス部門が語ります!
9日目は執行役員CFOの伊藤駿が担当します。
前回更新の〈Biz採用室〉折元さんの記事もご覧ください!


はじめに

ログラスでCFOをしている伊藤駿です。2023年12月に入社したばかりの私にとって、そしてログラスにとっても大きな山登りとなったのが2024年7月に発表したシリーズB(70億円の資金調達)でした。

海外投資家からの大型資金調達として話題になり、Sequoia Heritage, MITIMCo(マサチューセッツ工科大学), Moore Strategic Venturesからの出資額合計は、調達額全体の過半を占めました。

では実際にどのようなことを考え、どのような困難に直面し、どのようにそれを乗り越えたのか、そして今ログラスはどのようなことに取り組んでいるのかをこの記事でお話したいと思います。

少し先行して、CEOの布川も関連したnoteを投稿していますので、よろしければ合わせてご覧いただけたらと思います。
布川友也:「良い景気」を作るために、グローバル資本が入る意味https://comemo.nikkei.com/n/ne98ac8b945cc

ログラスの成長スタイル

ログラスは、非上場の期間に大きく投資をして、ビッグになって上場をするというスタンスで経営しています。なぜなら、将来の成長性を材料として資金調達を行い、その資金を投資に回すことによって実際に事業を大きくさせるということこそがスタートアップのビジネスモデルであり、そのビジネスモデルの優位性を信じているからです。実際、ログラスは実はクラウド経営管理システムとしては国内でも後発の部類ですが、そのファイナンス力で大きな金額を調達し、それを積極的に事業に投資することで、予実管理市場ナンバーワンのポジション(注)を築くことができました。
 
SaaSはどうしても先行投資型になりますから、ファイナンス力が将来の成長軌道を決めると言っても過言ではありません。ディープテック企業もそうかもしれません。シード期・アーリー期の段階から資金は重要ですが、それよりもまず顧客の求めるプロダクトを作り上げること、自社のプロダクトを売り込む市場を定義することが重要だと思います。そのためには、必ずしも資金力は最重要な経営ファクターではありません。一方、いざ自らの戦う市場が定義され、そこで面を取ることが重要になれば、その時は資金力がものを言います。そして、資金にも限りがあるので、資金をどう使うか/ちゃんと使えるかということも同じくらい重要になります。これがグロース期の戦いになります。 

日本のSaaS市場では、ARR100億円が1つの目指されるポイントですが、仮にバーンマルチプル(特定期間で減少したキャッシュ金額÷その期間で積み上げたARR)が1.5倍だとすれば、150億円の外部資金が必要ということになります。 

では日本で累計150億円の規模の調達を非上場段階でできるのか? これまで日本のSaaS企業で大型IPOが少なかったのは、市場規模の問題もありますが、こうした資金供給面の限界も影響していたように思います。結果として、日本のSaaS企業はある程度早い段階でIPOをしていくことになりました。そして、上場後もファイナンスを行うことでこの規模の調達を実現していったのです。

注: 富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2024年版」予実管理ソフトウェア、SaaS/PaaS、ベンダーシェア、金額ベース、2023年度実績

グロースステージ調達の現実

日本ではユニコーン上場(時価総額1,500億円を超える上場)が少ないということはよく言われますが、SaaS企業に関して言えばその理由はシンプルで、上記のような規模の資金が供給されるマーケットではなく、かつ非上場期間を長く取ることも難しかったからです。 

日本でも、リスクマネーを供給する投資家・金融機関が少しずつ増えてきていますが、まだまだグロースステージへの投資は十分ではありません。時価総額1,500億円を目指すのであれば、PSR7倍で逆算してもARR250億円くらいが必要になります。上記の例と同じくバーンマルチプル1.5倍だとすると、375億円の累計調達が必要です。この規模の金額を日本のVCだけで賄うのはほぼ不可能に近いと思います。 

ログラスは、事業計画上、70億円の資金をシリーズBで調達したいと考えていましたが、この金額ですら、国内VCからのみの調達だけで乗り切るのは難しいと考えていました。加えて、布川のnoteにも書かれている通り、上場後も株式を保有することのできるクロスオーバー投資家の大半が海外投資家であったことも海外投資家からの資金調達を目指した大きな理由でした。これらを実現するため、調達の1年程度前から海外投資家との接点を作り始め、グローバル調達を担えるCFO(私)を雇おうと考えたのです。 

リード投資家としてSequoia Heritageから大きな資金を調達できたのは非常に大きな成果でしたが、実は一番苦労したのは2番手となる投資家を見つけることでした。 

70億円の調達となると、3億円や1億円の積み上げではなかなか埋まりません。2番手の投資家であっても5億円以上、できれば10億円以上投資してほしい。しかしながら、10億円以上を投資できる国内投資家はかなり限られ、「リードまたは既存投資先でないと10億円は投資できない」という投資家や「10億円以上投資できるが、ステージがレイターでないと投資できない」という投資家がとても多かったように思います。ファンドサイズ的にも、100〜300億円のVCが多いですから、そうなってしまうのもうなずけます。 

これを解決したのが海外投資家でした。そもそも運用している資金の規模が大きいので、逆に小さい案件はコスパが合わないからやりたくないという方たちです。実際、私が会った海外投資家の大半は最低でも$5mn(約7.5億円)、できれば$10〜20mn(約15〜30億円)の投資を希望していました。 

当初は、日本に投資実績のある海外投資家のみに話を持ち掛けていたのですが、国内投資家からの大口投資が思うように進まない中で、特に春先以降は海外投資家側からの日本のスタートアップへの投資意欲の高まりを感じ、日本で投資実績のない海外投資家にまで打診範囲を広げました。

最終的には、MITIMCoやMoore Strategic Venturesといった投資家の投資を受けることができ、かつ彼らの通常投資サイズよりもやや小さい規模感での投資となりましたので、次のラウンドでの投資余力を残したままシリーズBの調達を終えることができました。

海外投資家も完璧な存在ではない

ログラスは、今回のラウンドがIPO前のラストラウンドではありません。次のシリーズCの調達規模がどのようになるかはまだわかりませんが、おそらくまた海外投資家に出資してもらえるかどうかが重要になるでしょう。海外投資家の意欲は引き続き旺盛で、シリーズB完了後からも既に5社以上の新規海外投資家からコンタクトがありました。

海外投資家から出資を受けることはとても意義があることですし、報道等でも日本のスタートアップが海外投資家から資金調達を行うことが注目を集めるようになってきましたが、実は私は海外投資家から調達することが何よりも素晴らしいことだとは思っていません。

株主構成はバランスが大事です。今、海外投資家が日本のスタートアップに注目しているのは、1)日本のスタートアップエコシステムが強化されてきているから、2)中国の政治リスクが大きくなってアジアのポートフォリオが足りないから、3)SaaSは米国で事業が減速していたから、といったことが主たる理由です。逆に言うと、また何か環境が変われば海外マネーが日本から引いていくこともありえますし、そうしたことは上場株では過去何回も起きています。

したがって、マクロ環境が変化したときでも支えてくれるような国内VCの方々ともしっかりと関係を築いておきたいというのが我々の思いです。顧客紹介で大きな力を発揮していただける金融機関系VC、経営陣に適度な緊張感とアドバイスを与えてくれる独立系VC、アライアンスを通じた事業シナジー生み出してくれる事業会社系VCの方々にもバランスよく出資いただけたこと、これは華々しい海外投資家からの調達に隠れがちですが、同じくらい重要な成果であったと考えています。

ログラスにとっても、日本スタートアップエコシステム全体にとっても、このようにそれぞれの投資家が特徴を持って投資を行っている状態が最も望ましいのではないかと思います。

シリーズBを通じた超えた「山」

さて、シリーズBで多くの資金を調達できたことで、ログラスの経営上の選択肢はとても広がりました。2年で新規事業を10個作るという宣言をしていますが、これも調達額が少なければできなかったでしょう。一定のブランドができたことで、アライアンスの話も増えました。今までは、ひたすら頭を下げてお願いすることしかできませんでしたが、今は大手企業とも対等な交渉をしやすくなったと感じます。

山を越える過程で身に付いたものもあります。1つは「勝ちグセ」。Sequoia Heritageから課せられた事業目標に対して全社一丸となって取り組んだ結果、今までにない事業成長を遂げることができました。1人1人が高いオーナーシップをもち、凡事徹底を積み重ね、やるべくことをやりきることでき、この過程でログラスとしても一皮剥けることができました。

投資家から得られた示唆もあります。例えば、今期のMQLを積み増すためにもっと広告投資が必要なのではないかということを散々投資家と議論したのち、MTG終了10分後に追加で数億円の広告投資を行うことを決めました。また、とある投資家はPaid CACとOrganic CACというKPIを気にしていたのですが、非常に便利なKPIだと気づき、そのMTG以降、さまざまな意思決定の場面でこの2つを使っています。Pipeline Coverageを聞いてきた投資家もいました。正直私はその時にその単語の意味を分かっていませんでしたが、これも非常に便利で、現在、Pipeline Coverageから逆算して、各四半期の始めにどれだけのパイプラインを積み上げられるかということを必ず目標の1つするようにしています。

ログラスの現在地

大きな資金調達を終えて、これで当分の資金は大丈夫とはなったものの、次から次へと投資プランが出てきているのが現在の状況です。CFOとしてはうれしい悲鳴ですが、トップラインも順調に伸びているので、取捨選択はすれど、さまざまな投資を行うことができていると感じます。

課題もさまざまなものがありますが、事業体が大きくなったことで課題がむしろ増えたと感じます。この1年で計数管理が進んだことで、課題を細分化して捉えることができるようになったというのもあると思います。また、中長期の投資を行えるようになったことで、中長期と短期のバランスを取る必要も出てきました。

このように、山を越えたら越えたで、もっと高い山がたくさん出現してきているような状態なのですが、ログラスが目指している「良い景気を作ろう。」という壮大なミッションを実現するには、1つ1つ目の前の山を越えていくしかないのだろうと思います。

課題が見つからないよりも課題だらけの方が次の成長につながる。そう信じて、さらなる事業成長にまい進していきたいと思っています。

最後に

グロースステージでの大型資金調達というチャレンジは、海外投資家による出資のお陰で成功裏に終えることができました。事業上のチャレンジが続くのはもちろんですが、資本政策上もまだまだ大きなチャレンジを行っていきます!

急成長スタートアップだからこそ、1年前とは全く違った課題に直面します。だからこそ多くの失敗と成功を積み重ね、沢山の経験を積むことができます。大きな目標に向けて多くの経験を積んでいきたい方、大募集しています!


ログラスでは現在一緒に働いていただける方を募集しております。
お気軽にご応募、カジュアル面談のご希望などお待ちしております。

【採用情報】
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【募集ポジション】
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