毒親 第29話 秘密の崩壊
第29話 秘密の崩壊
美和の疑念は日に日に深まっていた。リナの病室での会話をきっかけに、彼女は何か大きな秘密が隠されていると確信するようになり、ついに行動に出る決意を固めた。
その日、サキはウィークリーマンションで一人、落ち着かない様子で窓の外を見つめていた。カイからの電話で、美和が何かを探ろうとしていると聞いて以来、彼女の胸は不安で押しつぶされそうになっていた。
「私の存在がまたみんなに迷惑をかけてしまう…」
そう呟いたその時、インターホンが鳴った。サキはぎくりとしながらも、恐る恐るモニターを確認した。そこに映っていたのは、見覚えのある女性の顔!美和だった。
「…どうしてここに?」
サキは動揺しながらも、扉を開けるべきか悩んだ。しかし、答えを出す前に、再びインターホンが鳴る。
「サキ。開けなさい。」美和の声が冷たく響く。
サキは仕方なく扉を開けた。美和はじっとサキを見つめた後、静かに家の中に入ってきた。
「やっと見つけたわ。」美和はそう言いながらサキを値踏みするような目で見つめた。「ずっと行方不明だったくせに、こんな近くにいるなんて思わなかったわ。」
「…お母さん、どうしてここがわかったの?」サキは震える声で問いかけた。
「ユイが教えてくれたのよ。あの子ったら正直だからね。」美和は皮肉げに笑った。「それにしても、リナとカイはよくもまあ私に隠そうとしたものね。」
サキは一歩下がりながら必死に言葉を紡いだ。「私は…お姉ちゃんに会いに来ただけで、何も迷惑をかけるつもりはなかったの。」
「迷惑をかけるつもりがなかった?」美和はその言葉を嘲笑うように繰り返した。「あの家族にとって、あんたの存在そのものが迷惑なのよ!」
サキはその言葉に息を呑んだが、すぐに反論した。「そんなことない!お姉ちゃんは私を受け入れてくれた。あの家族が私にとって最後の拠り所なの!」
「拠り所?」美和の声が冷たく鋭くなった。「甘えるのもいい加減にしなさい。あんたみたいな人間がいるから、リナもカイも苦労するのよ。」
その瞬間、サキの中で何かが切れた。「お母さん、私がいなくてもお姉ちゃんは十分苦労してきた!あなたのせいで!」
美和は一瞬驚いたようだったが、すぐに顔を歪めた。「なんですって?」
「お姉ちゃんがどれだけあなたに苦しめられたか、あなたはわかっていない!」サキは涙を浮かべながら叫んだ。「お姉ちゃんは私を助けることで、自分の傷を癒そうとしているの。私を追い出したら、お姉ちゃんをさらに苦しめることになるって、どうしてわからないの?」
その頃、カイは急いでサキのマンションへ向かっていた。ユイがうっかり美和にサキの話をしたと知り、胸騒ぎを覚えていたのだ。
サキの部屋に到着したカイは、扉越しに激しい言い争いの声を聞いた。中に入ると、サキと美和が対峙しており、緊張が極限に達していた。
「美和さん、やめてください!」カイは二人の間に割って入った。
美和はカイに冷たい視線を向けた。「あんたもグルだったのね。」
「グルなんかじゃありません。僕たちはただ、リナのために最善を尽くそうとしているだけです。」カイは毅然と答えた。
「リナのため?」美和は嘲笑った。「本当にそれがリナのためだと言えるの?この娘を庇って、リナをさらに追い詰めるつもりなの?」
「それは違います!」カイは強く否定した。「サキさんはリナにとって大事な家族です。美和さんこそ、リナを苦しめる存在だって気づいていないんですか?」
その言葉に美和は口をつぐんだ。カイの真剣な目が、彼女の心にわずかな揺らぎを生じさせたようだった。
その夜、サキは再びカイの家に戻る決意をした。美和の攻撃はこれで終わるはずがないと誰もが感じていたが、それでも家族として一丸となって乗り越えようとする覚悟が芽生えつつあった。
しかし、誰も気づいていなかった。美和の疑惑が次の行動を引き起こし、さらに大きな波乱を巻き起こすことを。
家族の絆と崩壊の狭間で、彼らは何を選ぶのか。嵐は、まだ静まる気配を見せていなかった。
つづく