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7秒タイムマシン 第26話 「光の塔へ」

第26話 「光の塔へ」

アルケンの世界はレン、エミリ、そしてアヤカにとってまるで夢の中のようだった。見たこともない奇妙な生き物が飛び交い、空には二つの月が照らし出す幻想的な光景が広がっていた。レンたちは見知らぬ女性の案内で、不安と期待が入り混じる中、ゆっくりと歩みを進めていた。

「このアルケンという世界は、なぜこんなに奇妙なんですか?」レンが疑問を口にした。

女性は少し笑みを浮かべて答えた。「アルケンは、いくつもの次元が交差する場所。だから、ここでは時間も空間も通常とは異なる法則で動いているのです。あなたたちが元の世界に戻るためには、この歪んだ次元を理解し、うまく対処しなければなりません。」

エミリは女性の話を聞きながら、ますます不安になった。「でも、私たちにはどうやってそれをすればいいのか、全くわからない…」

女性はやさしくエミリの肩に手を置いた。「心配しないでください。『光の塔』には、次元を司る賢者がいます。彼らの助けを借りれば、必ず元の世界に戻れるはずです。」

アヤカは興味津々の表情で周囲を見回していたが、突然何かに気づいたように立ち止まった。「ねえ、パパ、ママ、あの塔って…」

レンとエミリもアヤカが指さす方向に目を向けた。遠くの地平線の上に、まるで空を突き刺すような高い塔がそびえていた。その塔からはかすかに光が漏れ出ており、まさに「光の塔」と呼ぶにふさわしい存在感があった。

「確かに、あれが『光の塔』に違いない。」レンが言った。

女性は頷き、三人を導くように前を歩き出した。「さあ、あそこに行けば、全ての答えが見つかるでしょう。」

歩を進めるにつれて、塔がどんどん近づいてくるのが感じられた。しかし、それと同時に不思議な現象が周囲に起こり始めた。道が突然消えたり、空間がねじれて見えたりする瞬間があり、レンとエミリは緊張を隠せなかった。

「これは…一体何なんだ?」レンが眉をひそめた。

「これは次元の歪みです。」女性が冷静に説明した。「アルケンではこうした現象が日常的に起こります。注意して進まないと、道を見失ったり、時間の流れに巻き込まれたりする危険があります。」

エミリが不安げにレンに寄り添った。「私たち、本当に無事に塔にたどり着けるのかな…?」

レンは彼女の手を握りしめ、力強く言った。「大丈夫だ、エミリ。俺たちはこれまで何度も困難を乗り越えてきたんだ。今回も必ず成功する。」

アヤカも二人の間に入り込むようにして、手を握り締めた。「私もパパとママを信じてる!一緒に頑張ろう!」

その言葉に勇気づけられ、三人は再び前を向いた。歪む風景の中で、彼らはしっかりとお互いを支え合いながら、一歩一歩、光の塔へと向かって進んでいった。

やがて、塔の麓にたどり着いた頃、女性は足を止め、静かに言った。「ここから先は、あなたたち自身の力で進まなければなりません。賢者たちが試練を課してくるでしょうが、それを乗り越えれば、きっと元の世界に戻る道が見つかるはずです。」

レンは深呼吸をし、決意を込めて頷いた。「わかりました。どんな試練が待っていても、俺たちは絶対に乗り越えてみせます。」

エミリもレンの隣に立ち、強い意志を込めた目で塔を見上げた。「私たちはもう二度と離れない。この家族で、どこまでも一緒にいるために。」

アヤカも微笑んで「絶対に帰ろうね!」と言い、三人はしっかりと手を取り合った。

塔の入口は、古びた石の扉で閉ざされていた。レンがその扉に手をかけると、重々しい音を立ててゆっくりと開いた。中には暗闇が広がっていたが、その奥から微かな光が導いているように感じられた。

「行こう。」レンが言い、三人はその闇の中へと足を踏み入れた。

塔の内部は冷たく、静寂に包まれていた。暗闇の中で、三人は互いを支え合いながら慎重に進んでいった。すると突然、足元が揺れ動き、石の床が崩れ始めた。

「気をつけろ!」レンが叫んだが、次の瞬間、三人は別々の場所へと引き離され、闇の中へと落ちていった。

それぞれが別々の試練を乗り越え、再び再会するためには、彼らが持つ強い絆と信念が試されることになる。


つづく

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