毒親 第56話 明かされる秘密
第56話 明かされる秘密
田嶋医師の悪意を察知したサキは、これ以上見て見ぬふりをするわけにはいかないと決意を固めた。その夜、カイと美和を呼び、田嶋に対する証拠を集めるための作戦会議を開いた。
「まず、リナの治療記録を確認する必要があるわ。」美和が冷静に提案した。「田嶋が何か手を加えているなら、そこに証拠が残っている可能性が高い。」
「でも、どうやって記録を手に入れるんだ?」カイが眉をひそめた。「病院の記録を盗むのは簡単じゃないだろう?」
サキは少し躊躇した後、小さく頷いた。「私がやる。田嶋のオフィスに入る方法を知ってるから。」
カイは驚きながらサキを見た。「サキ、それは危険すぎる。田嶋に見つかったらどうするんだ?取り返しがつかなくなるぞ!」
「大丈夫。彼は私が何をするかなんて思ってもいないはず。」サキの声には決意がこもっていた。「お姉ちゃんを守るためなら、私は何だってするわ。」
翌日、サキは病院のスタッフに紛れ込む形で、田嶋のオフィスに近づいた。勤務時間が終わるのを見計らい、彼が部屋を離れた隙にドアを開け、中へと忍び込んだ。部屋の中には膨大な量のファイルとパソコンが並んでいた。
「どこにあるんだろう……」サキは焦りながらファイルキャビネットを調べ始めた。そしてついに、リナの名前が記されたファイルを見つけた。
ファイルを開いたサキは目を見張った。そこにはリナの治療方針が詳細に記されていたが、いくつかの異常な記録が混ざっていた。薬の投与量が不自然に変更されていたり、必要な検査が意図的に省略されていたりと、明らかに通常の医療行為ではない痕跡が残されていた。
「これが証拠になる……!」サキはファイルをスマートフォンで撮影し、急いでその場を後にした。
その夜、サキは撮影した証拠をカイと美和に見せた。
「これを見て。」サキはスマートフォンを差し出しながら説明した。「リナの治療計画が意図的に操作されている。薬の投与量が明らかにおかしいし、必要な検査も飛ばされている。」
美和は画面を見つめ、眉をひそめた。「これだけの証拠があれば、田嶋を追及する道筋が見えるわね。ただ、これをどう使うかが問題ね。」
カイは腕を組みながら考え込んだ。「病院の内部監査に持ち込むか、警察に通報するか、それとも直接田嶋を問い詰めるか……でも、どちらにしても慎重に動かないと、奴に先を越される可能性がある。」
「それだけじゃないわ。」サキが重い声で言った。「彼はお姉ちゃんだけじゃなく、私にも何か危害を加えるつもりでいる。だから、これ以上黙っているわけにはいかない。」
「それなら、まずはリナを安全な場所に移そう。」カイが提案した。「田嶋に接触される可能性がある限り、リナは危険だ。」
美和はうなずいた。「私が何とかして別の病院に移る手配をするわ。その間に、田嶋の動きを封じ込める方法を考えましょう。」
一方、田嶋は自宅で酒を飲みながら不機嫌そうに電話をしていた。電話の相手は裏社会の人間で、彼にお金で雇われた者だった。
「進展はどうだ?」田嶋の声は冷酷そのものだった。
「準備は整っています。ただ、病院内での動きには注意が必要です。誰かが嗅ぎ回っている気配があります。注意して下さい。」電話の相手は低い声で答えた。
「ふん、誰が何をしようと無駄だ。リナもサキも、そしてその家族全員を破滅させてやる。この俺に逆らった代償を思い知らせてやる。」
田嶋は電話を切り、不敵な笑みを浮かべた。彼の手には新たな罠が握られていた。
「次はどう出る、リナの家族よ……?」
悪意と策略が渦巻く中、家族の絆が試される局面がさらに深まる。カイたちは田嶋の罠を回避し、リナを守り抜くことができるのか?闇に包まれた戦いは、ますます激化していく。
つづく