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毒親 第3話 毒の芽生え

第3話 毒の芽生え

翌朝、カイとリナが少し重たい空気の中で朝食をとっていると、突然リナのスマートフォンが激しく震えた。見ると、そこには美和からのメッセージがずらりと並んでいた。内容は、昨晩の食事への不満やリナの「母親としての自覚」についての小言がびっしりと綴られていた。美和の冷たく鋭い言葉が、画面越しにもリナを刺すようだった。

リナの顔は青ざめ、指が震え始める。カイが心配そうに「大丈夫?」と尋ねると、リナは唇を噛みしめ、「もうこんなメッセージを受け取るのは耐えられない…」と涙ぐんだ。

カイはそんなリナを見て、ついに決断する。「リナ、僕たちの生活を守るために、君の母さんとは距離を置こう。このままじゃ、君もユイも、家族全員が壊れてしまう。」

しかし、リナは悲しそうに首を横に振った。「カイ、私は母親に何も言い返せないの。彼女はいつも私を支配してきたし、私が逆らうなんて考えられない。もし少しでも反論したら、母はきっと激しく怒り狂って、もっと酷いことを言ってくる…」

リナの言葉に、カイの胸は怒りで燃え上がった。リナを長年支配してきた美和の「毒」が、再び彼女の中に根を張りつつあるのを感じたからだ。このままでは、自分の愛する妻と娘がこの「毒」に飲み込まれてしまうかもしれない。


数日後、カイは思い切って美和の元を訪れることにした。彼女と直接話し、リナのために少しでもこの状況を改善できるのではないかと信じたからだ。美和の家に到着したカイは、緊張を抑えながらインターホンを鳴らした。

ドアが開き、そこに現れたのはいつもの冷たい表情を浮かべた美和だった。「カイさん、何の用かしら?」と、彼女は鋭い目つきでカイを見据えた。

カイは毅然とした態度で言葉を放った。「美和さん、リナに対するやり方を改めてもらいたいんです。リナは家族と一緒に平穏な生活を送りたいと望んでいる。もう、彼女を苦しめるのはやめてください。」

美和は、カイの言葉に一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに冷笑を浮かべた。「平穏な生活?そんなものに逃げるなんて、リナはまだまだ甘いわ。私は彼女の母親よ、リナが私の言う通りに生きるべきなの。あなたには関係ないことよ。」

「でも、リナはもう大人です。美和さんが彼女に与えてきたものは愛ではなく、支配と恐怖です。リナには自由な人生を送る権利があるはずだ。」

その瞬間、美和の目に鋭い怒りの光が宿った。「何も分かってないわね。リナはね、私が死ぬまで私のものなの。あの子が私の意に背いて幸せになれるなんて、私が許すと思っているの?」

その言葉にカイは衝撃を受け、初めて美和がリナに抱く異常な執着の本質を目の当たりにした。美和にとってリナは娘ではなく、支配し続けるべき「所有物」であり、彼女が自己実現を果たすための「道具」だったのだ。


美和の狂気じみた発言に背筋が凍りつくカイだったが、彼はそれでも引き下がらなかった。「あなたの支配のために、リナやユイが犠牲になることは許されません。もし今後もリナを苦しめるなら、法的な手段も考えています。」

美和は目を細め、ゆっくりと不気味な笑みを浮かべた。「法的手段?いいわ。やれるものならやってみなさい。でも、その結果、リナが私から完全に逃れられると思っているなら甘いわよ。私は何があってもリナを手放す気はない。」

その言葉を聞いたカイは、家族を守る決意を固めてその場を去った。しかし、美和の狂気はさらに深まり、彼女は密かに恐ろしい策を練り始めていたのだった。


つづく

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