見出し画像

毒親 第65話 暗闇の攻防

第65話 暗闇の攻防


駐車場の闇の中、カイの車がけたたましい音を立てて急停車した。そのライトが、サキを取り囲む男たちを一瞬にして照らし出した。驚いた男たちは一歩後ずさりしながらも、すぐに体勢を立て直した。

「サキさん、大丈夫か!」カイが車から飛び出し、叫ぶように声をかける。

「なんとかね!」サキは鋭い視線を男たちに向けながら応じた。


一方、男たちは次第に焦りを見せ始めた。「余計なやつが来やがった……。」と、一人が舌打ちしながら言った。

「関係ない奴は引っ込んでいろ!」リーダー格の男がカイに向かって威圧するように叫んだ。

しかし、カイは一歩も引かずにサキの隣に立った。「あいにく俺は関係大アリなんだよ。お前ら、こんな卑怯な手で何をしようってんだ?」

男たちは短く笑い声を上げ、カイをじろりと睨みつけた。「いいか、証拠を出せばおとなしく帰してやる。それ以上騒ぐなら……」

「ならどうする?」カイは強い声で言い放った。「俺たちをどうにかしようとしたら、お前たちのほうがヤバい目に遭うぞ。」

男たちが戸惑いを見せたその時、サキはポケットからスマートフォンを取り出し、画面を見せた。そこにはすでに通報が完了したことを示す表示があった。

「警察に連絡済みよ。あんたたち、もう逃げられないわ。」サキが冷静に言った。

男たちの表情が一気に曇り、動揺が広がった。「ちっ、厄介な奴らだ……」リーダー格の男がつぶやきながら、撤退の指示を出そうとした。


だが、次の瞬間、駐車場の奥から別の車が滑り込むように現れた。それは田嶋自身の車だった。運転席から降りてきた田嶋は、冷酷な笑みを浮かべながら二人を見つめた。

「サキさん、君は本当に厄介な女だね。」田嶋はゆっくりと歩み寄りながら言った。「だが、もうこれ以上は許さない。」

カイは田嶋を鋭い目で睨みつけた。「お前、どこまで腐ってるんだ?」

田嶋はその言葉に動じることなく、静かに答えた。「腐っている?それは君たちだろう。私の名誉を傷つけようとし、病院を混乱に陥れたのだから。」

「名誉?」サキが怒りを抑えた声で返す。「あなたがしてきたことは、患者の命を利用して自分の利益を守るだけの卑劣な行為よ。それが名誉だというなら、とんだ茶番ね。」

田嶋の目が一瞬鋭く光り、周囲の男たちに指示を送るような視線を投げた。「証拠を出せ。さもなくば、痛い目に遭うのは君たちだ。」


その時、サイレンの音が響き始めた。真っ赤な回転灯が暗闇を切り裂きながら近づいてくる。

「警察だ!」男たちが動揺し、あたりを見回す。

田嶋は歯を食いしばりながら、「馬鹿な……こんなに早く……!」とつぶやいた。

サキはその隙を突いてカイに低い声で言った。「今よ、逃げる準備をして!」

カイは頷き、二人は車に向かって一気に走り出した。田嶋は激高して、「待て!」と叫んだが、男たちも追いきれない状況だった。


車の中で、カイはハンドルを握りしめながらサキに尋ねた。「これで本当に大丈夫なのか?」

「まだ終わりじゃない。でも、これで田嶋たちの立場が少しは不利になるわ。」サキは息を整えながら答えた。

背後には警察が到着し、田嶋と男たちを取り囲む光景が映し出されていた。果たして、この攻防の結果はどうなるのか、物語はさらに深い闇と希望の交錯へと進んでいく。


つづく

いいなと思ったら応援しよう!