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毒親 第23話 禁じられた甘いひととき

第23話 禁じられた甘いひととき

リナが入院して2週間が過ぎた頃、カイとサキの関係はさらに親密なものになっていた。互いに気持ちを押し殺そうとしていたが、生活の中で生まれる小さな瞬間が二人の距離を少しずつ縮めていった。

ある雨の夜、ユイを寝かしつけた後、カイはリビングで一人、酒を片手に窓の外を見つめていた。雨音が静かに響く中、サキがそっとリビングに入ってきた。

「まだ起きてたんだね。」
カイは驚いて振り返り、「うん、ちょっと考え事してたんだ。」と答えた。

「お兄さん、大丈夫?」サキはカイの隣に座り、まっすぐに彼を見つめた。その瞳の奥には、不安と戸惑い、そして何か抑えきれない感情が混じっていた。


カイは目をそらしながらも、「リナのことを考えてた。彼女がいないと、家の中が変わっちゃった気がしてさ。」と打ち明けた。

サキは優しく微笑み、「お姉ちゃんは強い人だよ。きっと治療もうまくいく。」と励ましたが、その声には微かな震えがあった。

カイはその震えに気づき、ふとサキの手に自分の手を重ねた。「ありがとう、サキさん。君がいてくれて、本当に救われてる。」

その瞬間、二人の間に漂っていた緊張がはじけ、サキの頬が赤く染まった。「…お兄さん、そんな風に言われると、私、何か勘違いしちゃうよ。」

カイは一瞬息を飲み、そして静かに言った。「もし君が勘違いしてるなら、僕も同じだよ。」


二人は言葉を失い、ただ互いの顔を見つめ合った。雨音がさらに大きくなり、まるでその音が二人の気持ちを後押ししているようだった。カイはそっと手を伸ばし、サキの頬に触れた。

「本当にダメだよね、こんなこと…」サキは囁いたが、その声は抗う気配を感じさせなかった。

「わかってる。でも…もう…。」カイの声もまた震えていた。

そして、二人は静かに距離を縮め、その夜、初めて唇を重ねた。


雨の音の中で、カイとサキは互いの存在を確かめ合うように抱きしめ合った。サキの温もりに包まれる中で、カイは全てを忘れたかった。リナへの罪悪感も、美和との緊張も、ただこの瞬間に溶けていくような甘美さに浸った。

サキもまた、抑えきれなかった感情に身を任せた。カイの腕の中で感じる安心感が、自分の求めていたものだったと気づきながらも、それが許されないことだという現実も理解していた。


夜が明け、カイはリビングのソファで目を覚ました。サキは既にキッチンに立ち、朝食の準備をしているようだった。昨夜のことを思い出し、カイの胸に重い罪悪感が押し寄せた。

「おはよう、お兄さん。」サキは振り返り、微笑んだ。その笑顔にはどこか覚悟のようなものが含まれていた。

「おはよう、サキさん。」カイはぎこちなく返事をしたが、二人の間には昨夜の出来事が確実に影を落としていた。

その日から、二人の関係は明らかに変わった。表面上は何事もないかのように振る舞っていたが、リナがいない家での生活が、二人にとってどこか甘く、そして危ういものになり始めていた。


つづく


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