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毒親 第68話 毒親の影が忍び寄る

第68話 毒親の影が忍び寄る


サキとカイは警察署で証拠を正式に提出し、田嶋に対する追及が進んでいく中、ひとまずの安心感を得ていた。しかし、その安堵も束の間だった。リナの病状が再び悪化し、家族に新たな試練が訪れる。

その夜、リナは病室でカイと話をしていた。病院の薄暗い照明の下、彼女の顔は痩せてはいたものの、目はどこか穏やかな光を放っていた。

「カイ…サキがいてくれて、本当に良かったわね。」リナは弱々しい声で微笑む。

「何言ってるんだ、リナ。君がいてくれるだけで、俺には十分なんだ。」カイはリナの手を握りしめた。

「でもね、私、もう時間が長くないことは分かってる。」リナの言葉に、カイは声を詰まらせる。「だから、あなたがユイを守ってくれるなら、それだけでいいの。」

カイは何も言えず、ただリナの手を強く握り返した。その場にいたサキも、病室の隅で静かに涙をぬぐった。


翌日、サキが病院を出て家に戻ると、玄関に車が停まっているのを見つけた。中から降りてきたのは美和だった。

「サキ、警察はどうだった?証拠はちゃんと受け取ってもらえたの?」

「うん。お母さん、田嶋の件はだいぶ捜査も進んでるし、マスコミにも田嶋の事は伝わったと思うけど…」すると美和が「そう、それはよかったわね。」美和が続けた「でもこんなことになったのは、サキ、あんたの責任でもあるんだからね」サキは、「なんで私に責任があるの?」ちょっと、ムッとして答えた。

しかし、やはり美和は、サキにとってはこれ以上ない「敵」である毒親だった事を思い出した。

「お母さん、今日は何しに来たの?」サキは冷静を装いつつも警戒心を隠せない。

「サキ、あんたも随分と偉くなったものね。警察やら証拠やら…でもね、リナが苦しんでるのはあんたのせいでもあるのよ。」美和の声には冷たさと毒々しさが滲んでいた。

「どういう意味?」サキは眉をひそめる。

「リナがこんなに早く病気を悪化させたのは、あんたが家族を振り回したからよ。」美和は言葉を続けた。「カイさんだって本当はこんなことで忙しくしたくないはず。ユイのことも考えなさいよ。」

サキはぐっと拳を握りしめたが、すぐに息を吐いて冷静さを取り戻した。

「お母さん、お姉ちゃんが何よりも大切に思っているのは、ユイちゃんとカイさんなんだよ。そして、お母さんがお姉ちゃんを支配しようとしていたことが、お姉ちゃんにとってどれだけ辛かったか、ちゃんと考えたことはあるの?」

美和の顔が一瞬歪んだ。しかし、彼女はすぐに薄笑いを浮かべた。「あら、あんたには関係ないことよ。リナは私の娘なの。私達のことに口を挟まないで。」

その言葉にサキは心底怒りを感じたが、それを表に出さずに答えた。「お姉ちゃんはもうお母さんの言いなりにはなりません。それがお姉ちゃんの選択です。ユイちゃんはお母さんの手には渡さないから、それだけは覚えておいて。」

美和はその言葉に激昂し、「あんたなんかに何ができるのよ!」と叫びながら車に乗り込んで去っていった。


その夜、カイにその出来事を話すと、彼は険しい表情を浮かべた。「美和さんがまたリナやユイにちょっかいを出すつもりなら、俺が正面から止める。もう家族を壊されるわけにはいかない。」

サキは頷きながらも、不安が胸をよぎった。毒親である美和の存在は、リナの闘病と家族の絆に再び影を落とそうとしていた。そして、田嶋の問題が一段落しつつある中、新たな戦いの幕が上がろうとしていた。


つづく

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