哀しいホスト 第3話 初めてのナンバー1
第3話 初めてのナンバー1
ホストの世界に足を踏み入れてから数か月が経った。雑用から始まり、初めて客を担当する機会を得たものの、最初は失敗ばかりだった。それでも俺は必死に食らいついた。先輩たちの接客を観察し、言葉遣いや立ち居振る舞い、女性の心を掴むテクニックを学んだ。少しずつではあるが、俺にも自信がついてきた。
ある日、店のオーナーが俺を呼び出した。いつも厳しい表情を崩さないオーナーが、その日は少しだけ柔らかい表情をしていた。
「キク、お前最近頑張ってるな。この調子でいけば、もっと客がつくだろう」
その言葉に俺は驚いた。褒められることなど滅多にないこの世界で、オーナーから直接の評価を受けるなんて思ってもみなかった。その日から、俺はさらに自分を追い込み、より多くの客を楽しませるための努力を重ねた。
そして、転機が訪れた。ある常連客が、他のホストではなく、俺を指名してくれたのだ。彼女は初めて会った時から俺を気に入ってくれていたが、その理由はよくわからなかった。ただ、彼女との会話が自然で居心地の良いものであることは確かだった。彼女が俺を指名する回数が増えるにつれ、他の女性客も次第に俺に興味を持ち始めた。
その頃、俺は自分の接客スタイルを確立し始めていた。無理に作り笑いをするのではなく、自然体で女性たちに接することを心がけた。表面的な会話ではなく、相手の話に真剣に耳を傾け、共感することを大切にした。すると、女性たちは次第に心を開いてくれるようになり、俺の元に通う客が増えていった。
そしてついに、ある月の売り上げランキングで俺はナンバー1に輝いた。店内に張り出されたランキング表を見た瞬間、俺の心は喜びで満ちた。長い間、見習いや雑用として働いていた俺が、ついにトップの座に立ったのだ。その瞬間、俺は自分がホストとして認められたことを実感し、これまでの苦労が報われたように感じた。
しかし、その喜びは単なる自己満足ではなかった。俺を支えてくれた客たちへの感謝と、これからも彼女たちを楽しませたいという強い決意が心に湧いてきた。ホストとしての成功は、単に金や地位を得ることではなく、目の前の女性たちを幸せにすることだということを、この時初めて理解したのだ。
それからというもの、俺はさらに忙しくなった。指名が増え、売り上げは順調に伸びていった。しかし、その一方で、忙しさの中で感じる孤独感や、心の奥底にある虚しさが少しずつ大きくなっていった。それでも俺は、ナンバー1の座を守るために、ますます自分を追い込んでいった。
喜びと苦しみ、その二つが入り混じった日々。ホストとしての成功を手に入れた俺だが、その成功の裏には、また別の試練が待ち受けていた。
つづく