７秒タイムマシン 第30話 不安の影
第30話 不安の影
静かな夜が明け、レン、エミリ、そしてアヤカは再び日常の生活に戻った。しかし、心の中に潜む不安は消えることはなかった。彼らは元の世界に戻ったものの、アルケンの影響が何かしら残っていることに気づいていた。あの薄紫色の月は、家族の心に重くのしかかっていた。
その朝、レンはいつものように出勤の準備をしていたが、心ここにあらずといった様子だった。エミリもまた、アヤカを学校に送り出す準備をしていたが、どこか落ち着かない表情をしていた。アヤカもまた、いつもより少し静かだった。
「パパ、ママ、あの紫の月、また見えるかな？」アヤカがふと口にした。
レンとエミリは顔を見合わせた。レンがアヤカに優しく答えた。「大丈夫だ、アヤカ。あれはきっと一時的なものだ。今日は学校で友達と楽しく過ごしておいで。」
アヤカは頷いたものの、どこか不安げな表情を浮かべていた。彼女が学校へと出発した後、レンとエミリはリビングで向かい合った。
「レン、私たち、どうするべきだと思う？」エミリが不安そうに尋ねた。
レンは深く息を吸い込み、真剣な表情で答えた。「まずは冷静になることだ。俺たちはまだ、あの紫の月が何を意味しているのか、はっきりとは分かっていない。だから、できるだけ情報を集めよう。何か手がかりがあるかもしれない。」
エミリは考え込むように頷いた。「そうね。私もできる限り調べてみるわ。何か見落としていることがあるかもしれないし。」
その日の午後、レンは仕事の合間にインターネットで調査を始めた。過去に似たような現象が報告されていないか、また、アルケンや異次元に関する情報を探した。しかし、思ったような手がかりは見つからなかった。
一方、エミリも自宅で何冊もの古い本や資料を調べ、賢者や異次元に関する記述を探していたが、こちらも有益な情報は得られなかった。二人とも、焦りと不安が募るばかりだった。
夕方になり、アヤカが学校から帰ってきた。彼女は元気に見えたが、その瞳の奥にはまだ不安が残っているようだった。エミリは夕食の準備をしながら、アヤカに優しく問いかけた。
「アヤカ、学校はどうだった？何か気になることはあった？」
アヤカは少し考えてから答えた。「みんなは何も変わってないみたいだけど、私、なんだか時々変な感じがするの。いつもと同じはずなのに、少しだけ違うみたいな…。」
エミリはその言葉に胸が締め付けられるような思いを感じた。「そう…でも、大丈夫よ。パパとママがいるから、何かあったらすぐに教えてね。」
レンもまた、アヤカの言葉に注意を払っていた。彼はエミリと目を合わせ、何か行動を起こす必要があると感じていた。
「エミリ、明日、もう少し詳しく調べてみるよ。俺たちはきっと何かを見落としているんだ。何かが変わってしまっていることに気づく方法があるはずだ。」
エミリは頷き、レンの言葉に同意した。「そうね。私たちが見つけ出さないといけない。家族として、この問題に立ち向かわなきゃ。」
その夜、レンとエミリは再び薄紫色の月が現れるかどうかを確認するために窓辺で待っていた。しかし、その夜は何も起こらず、いつもの一つの月が穏やかに輝いているだけだった。
「見えない…けれど、だからといって安心できるわけじゃないわね。」エミリがため息をついた。
「そうだな。」レンも同じく重い気持ちで答えた。「あの月が現れるということは、何かが歪んでいる証拠かもしれない。俺たちは油断しないようにしなければ。」
次の日、レンとエミリは再び情報を集めるために行動を開始した。レンは町の図書館に足を運び、古い新聞や記録を調べ始めた。エミリもまた、自宅でさらに調査を続けていた。
午後、レンが図書館で古い新聞を見ていると、ある一つの記事に目が止まった。それは、数十年前に報告された謎の現象についての記事だった。内容は、ある時期に突如として二つの月が夜空に現れたというもので、その後、地域一帯で不思議な出来事が続いたという。
「これだ…！」レンは心の中で叫び、急いでエミリに連絡を取った。
「エミリ、見つけたかもしれない。数十年前に同じような現象があったみたいだ。これが手がかりになるかもしれない。」
エミリは電話越しに驚きの声をあげた。「本当に？それで、何か解決策は書いてあったの？」
「いや、まだそこまでは調べられていない。でも、この情報をもとにさらに調査を進めるつもりだ。何かしらの手がかりが見つかるかもしれない。」
エミリは同意し、レンの言葉に期待を寄せた。「ありがとう、レン。それが何かわかれば、きっと次の一手が見えてくるはずよ。」
その夜、レンは図書館で見つけた記事をもとに、さらなる調査を進めた。彼は、過去に同じ現象が起こった場所や、その影響について詳細に記された文献を探し始めた。そして、その文献の中で、彼は「影の預言者」と呼ばれる存在についての記述にたどり着いた。
「影の預言者…？何だこれは…？」
その名前を目にした瞬間、レンの背筋に冷たいものが走った。彼はその言葉が、この異変の核心に関わっていると直感的に感じた。
つづく