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毒親 第66話 追い詰められる田嶋

第66話 追い詰められる田嶋


サキとカイが逃げ込んだ車の中では、緊張の糸がまだ切れることなく張り詰めていた。車のライトが駐車場を離れ、暗闇の中を突き進むと、後ろで聞こえるサイレンの音が次第に遠ざかっていく。

「サキさん、あの証拠のデータは無事か?」カイが運転しながら急いで尋ねる。

「ええ、大丈夫よ。スマートフォンにしっかり保存してる。」サキはスマホを握りしめながら答えた。


一方、駐車場では田嶋が警察に取り囲まれ、険しい表情を浮かべていた。警官たちは男たちを一人ずつ取り押さえ、車の中や周囲を調べ始めている。田嶋は何とか冷静を装いながらも、内心では焦りが渦巻いていた。

「警察の皆さん、これはただの誤解です!」田嶋は作り笑いを浮かべながら必死に弁解を始めた。「私は病院の管理者として、ここに来ただけで……」

しかし、警官の一人が鋭い目つきで言い放つ。「ここでの騒ぎについて通報が入っています。詳しい事情は署で聞かせてもらいます。」

「待ってください。」田嶋はさらに言葉を重ねる。「私はただ、問題を解決しようとしていただけで……」

だが、その言い訳は誰の耳にも届かない。田嶋たちは、パトカーに乗せられて、警察署に向かった。

その頃、サキとカイはある安全な場所に車を停め、次の行動を練っていた。サキはスマホの画面を確認しながら言った。

「このデータ、すぐに公的機関に渡したほうがいいわ。病院の内部で隠蔽される前にね。」

カイは少し考え込んだ後、頷いた。「そうだな。でも、田嶋の力はまだ侮れない。今後も反撃してくる可能性が高い。」

「だからこそ、私たちは急がなきゃいけないの。」サキの声には決意が宿っていた。「これ以上、彼のせいで被害を受ける人を増やさないために。」

そのとき、サキのスマホに着信が入った。画面には「美和」の名前が表示されている。

「お母さん?どうしたの?」サキが電話を取ると、緊迫した声が返ってきた。

「サキ、大変よ。田嶋の弁護士が病院に来て、証拠の無効化を主張しているの。彼、まだ諦めてないわ。」

「やっぱり……」サキは唇を噛みしめた。「でも、もう彼を好きにはさせない。私たちが手に入れた証拠は確実なものよ。」

「サキ気をつけてね。」美和が心配そうに続けた。「彼らは法だけでなく、あらゆる手段を使ってくる可能性があるから。」

電話を切った後、サキはカイを見つめた。「病院が田嶋側に操作される前に、私たちが動かなきゃ。」

「じゃあ、どこに行くんだ?」カイが尋ねる。

「警察署よ。」サキの声は強い確信に満ちていた。「正式な手続きを取って、証拠を彼らに引き渡すの。」


警察に連行された田嶋は、弁護士を呼んで、その後直ぐに釈放されたていたのだ。
その夜、田嶋は弁護士と共に次の一手を練っていた。

「警察の調査が進んでいる以上、下手に動けばかえって墓穴を掘ることになります。」弁護士が冷静に言う。

「それでも、私が失敗するわけにはいかない!」田嶋は声を荒げた。「私の地位と名誉が全てを支えているんだ!」

「ならば、すぐに事態を収拾できる方法を考えましょう。」弁護士は田嶋を冷たく見つめた。「ただし、リスクを負う覚悟はしていただきます。」

田嶋は深く息をつき、決意を固めた。「どんな手を使ってでも、あいつらを黙らせてやる……」


翌朝、サキとカイは警察署に証拠を提出し、田嶋のさらなる追及に向けた手続きを進めていた。その場には美和も同席し、彼らの証言を裏付けるサポートをしていた。

「これで彼を追い詰められるはずです。」警官の一人がそう言ったとき、サキの胸にはほのかな希望が芽生えた。

しかし、田嶋が完全に失脚するには、まだ多くの困難が待ち受けているだろう。果たして、この戦いの行方はどこへ向かうのか、物語は新たな局面へと進んでいく。


つづく

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